ランナーズハイの秘密

2016年06月03日


長距離走をする人のあいだで使われる「ランナーズハイ」という言葉。それはいったいどのような状態になることなのでしょうか。今回はそんなランナーズハイのナゾに迫ってみましょう。

 

デッドポイントとセカンドウィンド


マラソン愛好家のブログやfacebookにときおり「今日、ランナーズハイの状態になった」と書かれているのを見かけます。「えっ、そんなに簡単に経験できるものなの?」と疑問に思ったことはありませんか?

走り出した直後の体内では、交換神経が緊張状態になり、血圧が上がり、心拍数が増えます。筋肉で発生した熱によって体温が上昇し、それを調節するために汗をかきます。酸素不足の状態が続き、体には負荷がかかります。この最初の息苦しい時間帯をデッドポイントと言います。

デッドポイントの時間帯に、苦しさに耐えながらスピードを落とさず走り続けると、しだいに呼吸器や循環器が効率よく働くようになるので、酸素の供給量が必要量に追いつき、呼吸が楽になります。この段階が「セカンドウィンド」と呼ばれる状態で、つらい状態から抜け出し、体が軽くなって、爽快にどんどん走れる感覚を味わえます。

一度このセカンドウィンドの感覚を味わったランナーはやみつきになり、苦しい思いをした記憶はどこへやら、またすぐに走りたくなるのです。しかし、ある程度の基礎体力や持久力がないとセカンドウィンドを経験することは難しく、マラソン初心者はこの感覚を知らないまま終わってしまいます。

多くのアマチュアランナーの感じているランナーズハイの感覚は、おそらくこのセカンドウィンドの状態を指しているのだと考えられます。

 

トップアスリートと「ランナーズハイ」


スポーツ科学の専門家によれば、アマチュアランナーのあいだで使われているランナーズハイという言葉は本来の現象から離れて、少し安易に使われているようだとの見解が出ています。
なぜなら、ランナーズハイとはもう少しまれな現象だと考えられているからです。

マラソンで長時間走り続け、極限まで体に負荷がかかり強いストレスを感じると、脳は視床下部に指令を出してβエンドルフィンという物質を分泌します。βエンドルフィンとオピオイド受容体が結合することで痛みの感覚を麻痺させ、同時に脳に快感をもたらすドーパミンの分泌を促すため、ヒトは過酷な状況にもかかわらず幸福感や陶酔感を覚えると言います。このかなり特殊な状態がランナーズハイです。
ですから、トップアスリートといえども、必ずしもランナーズハイを経験しているとは限りません。

残念ながらランナーズハイという現象は、検査方法のリスクなどの理由もあって、すべてが科学的に実証されているわけではなく、数値的な明確性も十分ではありません。つまり、現段階では厳しいトレーニングに励むランナーたちが、単に気分的な印象や感覚を表す言葉として使っている…その現象が一人歩きしているような状況のようです。

(ライター/ 和田朋子)

 

コメント

この記事へのコメントはありません。

この記事の関連ワード

新着の記事

Sidekibit b fefa1c4699a4986147a527399409cd3c5417e373a7c81d98947fd955971daf54

人工知能KIBITが、あなたに合った記事をおすすめします。 初めてKIBITに教えた時は翌朝までお待ちください。