吐血じゃなくて、ビンロウです

2015年11月27日

元気のヒント・松浦優子の台湾暮らし(金曜更新) 第4回

1463485532

 台湾の噛みタバコの一種、ビンロウ。眠気覚ましに効果があるものの、飲み込むと体に悪いので吐き捨てます。その様子は、まさに吐血! いったいどんなものなんでしょうか。


 台北では少ないのですが、ちょっと田舎の方へ行くと、路上に鮮血のような真っ赤な液体がぶちまけられた跡があってびっくりすることがあります。その正体はアジア各地で使われる「ビンロウ(檳榔)」という噛みタバコの一種。ヤシ科の木・檳榔の実で出来ています。

ビンロウってどんなもの?


 ビンロウを売るお店は大きな幹線道路沿いに多くあります。長距離トラックの運転手などが眠気覚ましに愛用しているからとも言われます。ビンロウ店では店員さんが慣れた手つきでビンロウを作っています。緑色のオリーブを一回り大きくしたくらいの檳榔樹の実にナイフを入れて縦に開き、セメントにそっくりなペースト(石灰)を少し塗り、別の小さな緑色の実(荖花)のかけらを挟みます。それをさらに手のひら大の緑の葉(キンマ)でのり巻きのように巻いたものが一般的。タバコやお酒と同じ扱いで、台湾では18歳未満は買えません。

1463485532

ビンロウの噛み方


 私は周りから強く止められたので未体験です(そもそも、女性が嗜むものではないらしい)。ビンロウには青臭い苦さと渋みがあり、強いタバコとお酒を一緒にとったようにくらくらするのだとか。ビンロウを噛んでいると口の中で実と石灰が化学反応を起こし、大量に出てきた唾液が真っ赤に染まります。その汁を飲み込むと食道と胃を傷めるので、吐き捨てなければいけません。それが路上の血痕まがいの正体です。おじさんがビンロウ汁を吐いているのを見かけたことがありますが、…本当に、吐血にしか見えない恐ろしい光景でした。常用していると歯も黒く染まってしまうそうです。そして実際には、歯が染まるだけでは済みません。

1463485532

ビンロウの有害性


 ビンロウは、元々台湾に住んでいたマレー系先住民の伝統的な嗜好品として古くから使用されてきました。宗教祭祀や結婚における贈答品として、文化的・社会的な意味も持っていたのです。ですが、世界保健機関(WHO)により一級発がん性物質に認定されるなど、その有害性はすでに明らかとなっています。台湾衛生当局の統計によると、ビンロウが引き起こすと言われる「口腔がん」は、2012年の台湾男性のがん罹患部位の第4位に入っています(※1)。台湾人女性や日本人のがん上位には出てきません。


 政府は、禁煙ならぬ「禁ビンロウ講座」を開くなどして健康被害減少に力を入れています。ビンロウを噛む人(男性)の割合は、18~29歳で7.49%、30~39歳で15.34%、40~49歳で16.36%、50~64歳で10.02%、65歳以上で3.44%(※2)。台湾男性の成人喫煙率が29.2%(※3)ですから、かなり減ってきているようです。地域別では、先住民族が多く住む台湾東部・南部に常用者が多いそうです。


 気軽に一度試してみてください、とは言えない台湾の伝統的嗜好品、ビンロウ。旅行の時に見かけたら、「ああ、これか」と注目してみてください。

※1:衛生福利部国民健康署 発表(2015年4月14日)
※2:衛生福利部国民健康署「成人喫煙行為調査」・「健康危害因子監測調査」(2012年)
※3:衛生福利部国民健康署「成人喫煙行為調査」(2014年)

プロフィール

1463485532

松浦優子
東京都出身。Web広告ディレクターとして勤務後、ひょんな縁で台湾に語学留学。帰国後に日本語教師資格を取得、現在は外国人向け日本語レッスンや台湾現地ニュースの翻訳などを手掛ける。台湾には年数回「里帰り」。

コメント

この記事へのコメントはありません。

この記事の関連ワード

新着の記事

Sidekibit b fefa1c4699a4986147a527399409cd3c5417e373a7c81d98947fd955971daf54

人工知能KIBITが、あなたに合った記事をおすすめします。 初めてKIBITに教えた時は翌朝までお待ちください。