イタリア風、人間関係を熟成させるコツ

2016年06月16日

スローフード・スローライフの地イタリア*シエナより愛をこめて 第26回


イタリア人はそれぞれが個性を持ち、
社会でも家庭でも、友だちと居ても、恋人と居ても、自分の意見を率直に述べる。
当然、日常の風景では 大なり小なりの衝突が絶えない。
しかし人間関係は楽しくやっている。そのコツとは、意外と単純な心構えだった。

 

今日も楽しかった。と同時に、何かが心に引っかかった


シエナ近郊の町「セッレ ディ ラポラーノ」で行われた祭りに行ってきた。

中世の趣がそのまま残る町中には、路地が迷路のように入り組んでいて子供や老人たちの抑揚あるイタリア語と、鳥の鳴き声が石に、レンガにこだましている。

大きなアトラクションなどないが、そぞろ歩きをしているだけで十分に楽しい。

のんびりと過ごし、お腹も一杯になって家に戻ってきたが、
何かが消化できないまま寝床についた。

 

 


▲町民の意気揚々としたお喋りが、祭りの空気を生み出す

 

気持ちの消化不良


祭りには、パトリッツィオと私、パオロとアンジェラの2組で落ち合い、パオロの車で向かった。

この日、私達が口にしたもの、グラスワインや小腹を満たすパニーノ、特設されたスパゲッティ屋での支払いは、全てパトリッツィオと私が行い、他の二人はお金を払わなかった。

パオロの車に便乗させてもらい、シエナから20キロ離れた町にやってこれた感謝を込めて、私達は率先して支払いをしたのだが、ありがとう、の言葉もない。

翌朝、パトリッツィオに尋ねた。

「昨日は楽しかったわね」
「ああ、最高に楽しかったよ!」
「でもね、私、ちょっとスッキリしないのよ。
昨日の食事代、ほぼ あなたが払ったでしょ。
彼らの財布の紐が堅いことは知っているけど、何とも思わないの?」
「いいや。気にならないな。確かに彼らは、俺たちよりも裕福な生活を送ってる。耳の穴からお金がこぼれそうになるほどにね。
それにも関わらず、お金を払いたがらないのは、悲しくもあるが・・・俺にはどうでもいいことだ」
「あなたが何とも思わないのだったら、私も特に考えない!」
「俺はなんて寛大なんだ!ヤッホー!」

彼の雄たけびを聞いて、私の中のモヤモヤがシューっと消えた。

 


▲月日が人間関係を円熟させてくれる

 

身軽に構えると、そこから人間関係が熟成しはじめる


私は、友達や仕事の人間関係で歪みを感じると、パトリッツィオにこぼす。
彼は決まって、こう答える。

「キヨミ、人は皆、違ってできているんだ。
日常生活で80%くらいのフィーリングが合えば、それはもう上出来だよ!
残り20%は、状況やテーマによって、御互いの意見が違うのが当然だ。
違う部分は追求しないで、ただ放っておけばいいんだよ」

縁があって知り合い、接触する機会を重ねて関係が深まっていく。
気が合ってお互いが同士に思えるうちは良いが、ある時、自分の意見に反対されたり、自分の価値観とはそぐわない相手の言動が気に障ったりする。

その部分に対して
「友達だと思っていたけど、やっぱり違うのね」
と気持ちが遠ざかることもあれば、
相手との意見の距離を縮めようと努めるため、自分の見解を相手に説明したり、相手を分かろうと、自分に言い聞かせたりする。

ちょっと生じた違いにとらわれると、重みが増していく。
もちろん、自分を受け入れてくれない人、挑戦的な人、故意に傷つけようとする人など・・・

波長の合わない人とは、心身の健康を保つため、なるべく関わらない方が良いが、お互いのフィーリングがあっていたら、その部分を有難く思っていればいい。
人間関係を円滑に保ちたいあまりに、相手との摩擦を避け、違いを埋めようとすると、どこか窮屈だ。

自然体で付き合い、自分の感覚と違う場面に遭遇したら
(違いがあって当然)と流し、後味の悪さを引きずらずに付き合いを続けていく。
気が付くと、時間を重ねた分だけ、友達関係が熟成されていく。

これは仕事をする上でも言えることだ。
ビジネスで、日本とイタリアの間に立っていると、
イタリア側の至らなさを、厳しく突いてくる日本人がいる。
それまでは友好的な関係を保ってきたのだが、ちょっとしたイタリア側の気の回らなさに、責任を求めてくる。
すると、イタリア人は醒めてしまい、お金の関係でしかなくなってしまうのだ。

ケースバイケースだが、相手の些細なミスに対して執拗に攻めず、フィーリングが合ってお互いがやってこれた部分に目を向け直すと、相手がぐっと仲間意識をもって近づき、窮地に立たされた時でも個人的に動いてくれたりする。

「M’innamorai di te perche’ tacevi」
君に恋をした。何故なら君は黙っていてくれたから
 (イタリアの詩人 オリンド グエッリーニ)

自分の価値観から相手を批判する内なる声が黙ったら、
もっと楽に人間と付き合えるようになるかな?
と感じた今日このごろです。

 


▲楽天的なパトリッツィオ


プロフィール


大多和聖美(おおたわきよみ)


トスカーナ州・シエナ在住。ソムリエ。ワインショップ、小麦粉アレルギー対応レストランでのコック体験を経て独立。「エノテカトスカーナ」を立ち上げ、日本にワインやオリーブオイルの販売を行う。

コメント

この記事へのコメントはありません。

この記事の関連ワード

新着の記事

Sidekibit b fefa1c4699a4986147a527399409cd3c5417e373a7c81d98947fd955971daf54

人工知能KIBITが、あなたに合った記事をおすすめします。 初めてKIBITに教えた時は翌朝までお待ちください。