うつ病を知る、治す(4) 休養から職場復帰へのプロセス

2016年05月19日


十分に休養をとり、治療の効果も上がって、症状が改善してきたならば、次に気になるのは仕事に復帰するタイミングです。今回はその際に気をつけなればならない事柄や、そのプロセスについて見ていきましょう。

 

少しずつ慣らし運転で


症状が改善してくると、それまでの何に対しても関心が湧かなった状態から脱して、たとえば新聞を読んだりテレビを見たりなど、何かをやってみようという気持ちが少しずつ起こってきます。それは本人にとっても家族にとっても喜ばしいこと。でも、これで病が治ったと考えるのは気が早すぎます。一気に元の生活に戻そうとして無理をすると、再び症状が悪化しかねません。
自発的に何かをやろうという気力が湧いてきたときは、「やりたいと思うことだけ」を「無理しない範囲で」やること。多くの医師は、やってみたいと思うことの「半分ぐらいから始める」のが妥当という見解のようです。
たとえばある日、「朝食を作ってみよう」と思いついたとしましょう。この場合、一気にすべてのメニューを作ろうと頑張るのではなく、まずコーヒーをいれるのを手伝うことぐらいから始めます。そしてそれが無理なくできると感じたら、次の週はコーヒーとパンの用意、その次の週はそれにサラダづくりも加える…というふうに、自分の疲労の程度や気分の状態を確かめながら、徐々に作業に体を慣らしていくのがポイントです。

 

復職する際には職場の人も含めて話し合いを


徐々にやってみたいことや興味を持てることが増え、日常生活に支障がなくなってきたら、医師から「そろそろ仕事への復帰を考えてみましょう」という言葉が出てくるでしょう。これもまた、本人にも家族にも嬉しいことですね。
しかし、ここでも焦りは禁物。いきなり職場へ戻って、もともとやっていた作業を100パーセントこなすのは無茶というもの。再び病状を悪化させる可能性が高くなります。前述した朝食の例のように、仕事も内容や勤務時間を徐々に増やしていくプロセスが必要です。
復職に際して大事なのは、焦らず医師の指導を守ると同時に、勤務先の人とコミュニケーションを密に取ることです。
主に上司や人事担当者になるでしょうが、まず休職する際に相談や手続きをしてもらった人物に連絡を取ります。そして、復職したい意志を伝え、医師を含めた三者(家族も同行する場合は四者)で話し合いを持つのが理想的。
その際、医師から会社の担当者へ回復状況を伝えてもらい、同時に、どのような作業や勤務形態からスタートし、本格的な復帰へとつなげていくかについて打ち合わせをします。
もし、こうした形態での話し合いが難しければ、医師から会社の産業医に宛てた診断書を書いてもらいましょう。そして、それを元に人事担当者と産業医を交えて話し合いの場を持つようにしましょう。
復職には、上司や同僚のうつ病への理解と、復帰プロセスへの協力が必要です。とくに、窓口となってもらう職場の担当者との密なコミュニケーションが大切になってきます。
もちろん、こうした手順を踏むときに家族の力を借りてもかまいません。

 

『復職支援プログラム』の積極的な利用を


充分な話し合いを持っても、家庭での休養生活から職場へ戻ることには不安がつきまといます。思いのほか仕事がはかどらなかったり、休職する前ほど作業のスピードが戻ってこなかったりします。そのために無理をしてしまう人が少なくないのも事実。
そこで注目したいのが、医療機関が行っている『復職支援プログラム』への参加です。
このプログラムは、いきなり職場へ戻るのではなく、移行期間を置くことで、ゆるやかに職場復帰を可能にするもの。うつ病の治療法の一つとして、簡易な作業から徐々に難易度を上げていく「作業療法」がありますが、その一環として組まれたプログラムです。
具体的な内容としては、以下のようなものがあります。

・グループでの話し合いなどで、相手の話を聞く感覚を取り戻す。
・卓球などの軽い運動を通して、リラックスしたコミュニケーションを体験する。
・図書館などへ出かけて時間を過ごし、社会生活のカンを取り戻す。
・パソコン入力などの軽い作業で、仕事の感覚に慣らす。

これらを「職場復帰」という共通の目的を持つ仲間とサポートし合いながら行うことで、よりスムーズな復帰が可能となるのです。また、プログラムを行っている施設に定期的に通うことで、規則正しい生活や通勤の感覚を取り戻せるという利点もあります。
この『復職支援プログラム』、その効果が注目されているものの、取り入れている医療機関はまだ数が限られています。各都道府県の精神保健福祉センターや、各地の労災病院へ問い合わせてみるといいでしょう。

ライター/三好達彦

◆参考
野村総一郎『うつ病をなおす』(講談社現代新書)、野村総一郎総監修『うつ病』(別冊NHKきょうの健康)、大野裕『最新版「うつ」を治す』(PHP新書)、吉野聡『それってホントに「うつ」?』(講談社+α新書)、笠原嘉『軽症うつ病 「ゆううつ」の精神病理』(講談社現代新書)、桑崎彰嗣監修『家族が「うつ」かもしれない、と思ったら』(オレンジページOTONA生活科)以上、書籍。
『こころの陽だまり』(ファイザー株式会社)http://www.cocoro-h.jp/index.html
『うつ病 こころとからだ』(塩野義製薬、日本イーライリリー株式会社)http://utsu.ne.jp/
『ustu,jp うつ病と不安の病気の情報サイト』(グラクソ・スミスクライン株式会社)

 

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