「うつ病を知る、治す」その3 うつ病の治療はどう進められる?

2016年03月30日

 

病院に行って、正式にうつ病であると診断されたら……。次は、医師の指導のもとで治療に入ります。それは具体的にどう進められるのか。今回はうつ病の治療内容とそのプロセスについてご説明します。

何をおいても、まず「休養」


うつ病の治療のうえで、最初に必要となるのが「休養」です。仕事や家事、学業を休むことに抵抗を覚える方も多いと思いますが、うつ病は「心と体のガス欠」と言える状態で、活動するエネルギーを失っているものを無理矢理動かそうとしているようなもの。十分に休養をとり、エネルギーが溜まるのを待つことが大事だということを認識してください。
休養を取っているあいだにも重要なことがあります。
まず、復帰を焦らないこと。
うつ病で休養に入った患者さんのなかには、「仕事を休むと他人に迷惑がかかる」という罪悪感や、「自分の将来が台無しになってしまう」などの不安感にとらわれ、まだ十分に回復していないのに復帰を急ごうとして、余計に症状を悪くしてしまう方がいます。
また、じっとしていられないタイプの患者さんもいて、仕事を休んだことを機に、普段できなかった身の周りの整理や家庭のことを片づけようとして動き回り、結果として症状を悪化させることもあります。
繰り返しになりますが、うつ病の患者にとっては「休養」が治療になることをしっかり理解しましょう。以前の生活に戻るための準備は、エネルギーを十分に取り戻してから徐々に始めればいいのです。
 

治療の中心となるのは薬物療法


うつ病の治療では、「休養」とともに、もう一つの軸となるのが「薬物療法」です。
“メンタルな治療に用いる薬”と聞くと、それだけで拒否反応を示す方も少なくありません。しかしうつ病治療の歴史は治療薬の開発とともに進んできており、数十年もの研究を経て、すぐれた効果を示す薬が多く開発されてきました。そのため、現在では「薬物療法」を外しては考えられないものになっています。
みなさんも耳にしたことがあると思いますが、うつ病の治療には主に「抗うつ薬」と呼ばれる薬を用います。
以下、一般的なうつ病(医学的には「大うつ病」と呼ばれます)の治療において主に使われている二つの薬を説明しましょう。

○SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
日本では1999年から使われていて、効果が高く副作用が少ないことから、現在では一番多く用いられている薬です。うつ病の人の脳では、神経伝達物質である「セロトニン」や「ノルアドレナリン」の量が減少しているとされています。神経伝達物質は、神経細胞から出て情報伝達を行っていますが、使われないで余ると、またもとの神経細胞に取り込まれていきます(再取り込み)。SSRIは、「セロトニン」の「再取り込み」をブロックすることによって量を増やし、脳の情報伝達を活発にして、うつ病の症状を改善するものです。副作用としては、使い始めの時期に吐き気や嘔吐などの症状が現れることがあります。
『セルトラリン』『パロキセチン』『フルボキサミン』という名称の薬が使われています。

○SNRI(選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)
この『SNRI』は、前述の「セロトニン」に加え、「ノルアドレナリン」にも作用するように作られた薬です。副作用は『SSRI』よりも小さいのですが、排尿困難が強くなるため、前立腺肥大がある人には用いません。日本では『ミルナシプラン』という薬が2000年から使われています。

他にも『三環系抗うつ薬』『四環系抗うつ薬』という、やはり神経物質に働きかける薬がありますが、上記の二つより副作用が強いこともあり、使用する機会は少なくなりつつあります。

効果が出るまでには時間がかかる

 

薬物療法は、最初は副作用を少なくするために薬の量を少なくしておき、効果と副作用のバランスを見ながら増減したり、種類を変えたりするのが普通です。また、不眠症状を和らげる睡眠導入剤や、抗不安薬を用いる場合もあるため、これらの組み合わせについても同時に探っていきます。
そして、これはどの抗うつ薬にもある特性なのですが、飲み始めてから効果が表れるまでに通常2~3週間、時間がかかることを知っておく必要があります。
もともと薬嫌いの方などは「やっぱり効かないじゃないか」と言って飲むのを中断したり、少し副作用が出ると、不快だからと言って飲まなくなったりすることがあるようですが、これでは治療の効果が上がりません。通院して医師に薬の効果を判断してもらいながら、指示どおりに飲み続けることが大切です。

医師は薬の種類や量を適宜調整しながら患者に合う処方を探るという作業を繰り返すため、治療の効果が出て抑うつ状態から脱するまでには相当の時間を要します。ここでも焦りは禁物。薬の服用を続けながら十分な休養を取り、エネルギーが蓄えられるのを待つ心のゆとりを持つことが治癒への近道のようです。

 

 

<参考>
『うつ病をなおす』野村総一郎(講談社現代新書)
『こころの陽だまり』(ファイザー株式会社)
『うつ病 こころとからだ』(塩野義製薬、日本イーライリリー株式会社)
『ustu,jp うつ病と不安の病気の情報サイト』(グラクソ・スミスクライン株式会社)
ほか。

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