精神科医と看護師のユニット、プルスアルハの絵本で知る繊細でディープな子どもの心


親がうつ病にかかったとき、子どもは「自分のせいかもしれない…」と考えてしまう可能性があるという。精神科医と看護師のユニット「プルスアルハ」の手がける絵本は、家族の病気や発達障害、不登校など、何らかの理由で生活がしづらくなっている子どもの気持ちを表現し、どう接すればよいかを具体的に教えてくれる。

 

たとえばお母さんがうつ病になったとき、子どものこころは…

 


 ▲「どうしよう なんだか元気がないみたい どうしたらいいのかな」お母さんの様子に思い悩むスカイ

 

母親がうつ病になると、周りはうつ病になった本人のことばかり心配し、子供の気持ちまではケアできていないことのほうが多い。

 

プルスアルハ著の『ボクのせいかも…―お母さんがうつ病になったの―』は、主人公の男の子「スカイ」が、うつ病の母親に対して感じる気持ちをつづった絵本。今までとは違うお母さんの様子を見て、「スカイ」は「ボクのせいかも…」と考える。子どもの心にも、適切なケアが必要なのだ。

 

絵とお話を担当しているのは看護師の細尾ちあきさん。印象的な絵本のシーンには、精神科医の北野陽子さんの解説がつく。

 

自分が悪い子だから、自分のことをママが嫌いだから…。就学前の幼児は、発達の関係で、特に色々なことを自分と関連付けて考える傾向があることが知られている。そして、それよりたとえ大きくなっていても、こころの病気はわかりにくく、どこかで自分に結びつけて悩む可能性があるという。

 

北野さん:「スカイ」の場合は、「あなたのせいではないよ」としっかり言葉に出して伝えることがとても大切です。子どもの年齢や個性、家族の状況によって、子どもの感じ方も、必要な支援もさまざまです。生活がサポートされることや、話をできる大人の存在。親御さんや家族がサポートされることもとても大切です。

 

▲「いつだって心配なことは お父さんに話をしたらいいんだよ」「スカイはガマンしなくていいんだ。でもね、お母さんが横になっているときには、しばらくそっとしてあげようね」とお風呂で優しく話すお父さん

 

医師と看護師のユニット、プルスアルハ

 

壁一面に細尾さんの作品が飾られた事務所は、まさに小さな美術館だ。

 

 ▲作品が所狭しと飾られた事務所

 

北野さんと細尾さんの出会いは、2009年、さいたま市心の健康センターにさかのぼる。医師と看護師としてリーフレットの制作や心理教育プログラム、子どもの居場所づくりなどいろいろな仕事に関わる中で、「精神障がいの親を持つ子どもの応援」というテーマに偶然たどり着き、2012年4月、著作活動を開始した。

 

 “プルスアルハ”は「プラスアルファ」をもとにした細尾さんの造語。少しの想像力で日々の生活に安心とhappyを、という思いが込められた二人の著作活動のユニット名だ。


細尾さん:レクリエーションのちらしや、通院日のカレンダーなどを手作りするうち、どうせなら楽しんでもらいたいと思ってイラストを入れたり、色々と工夫するようになりました。

北野さん:仕事で必要に迫られて試行錯誤していたことが今の活動につながるとは、想像もしていませんでしたね。


▲ひとつひとつ違う表情の編みぐるみも細尾さんの作品

 

▲左の男の子は「フレーフレー自分」と自分自身にエールを送っている。

 

▲子どもの複雑な気持ちが感じられる2枚

 

大人も子どもも気付きがある絵本


 


二人がプルスアルハの名前で出版した絵本は、現在までに2シリーズ計7冊。
『ボクのせいかも…―お母さんがうつ病になったの―』をはじめとする“家族のこころの病気を子どもに伝える絵本シリーズ”は、うつ病編の本書、統合失調症編(前編後編各1冊)、アルコール依存症編の全4冊(ゆまに書房刊)。

 

もう一方の“子供の気持ちを知る絵本シリーズ”では、不登校編家庭内不和編発達凸凹・感覚過敏編の全3冊揃っている(ゆまに書房刊)。

 

▲聴覚過敏の主人公には、教室の音が耳につきささるように聞こえてしまう

 

絵本制作のきっかけは、落ち着かない家庭で育つ子どもの心理教育プログラムの立ち上げに関わって手作りした紙芝居だった。紙芝居を子どもが真剣に聞く姿がとても印象的だったという。大人からも、「子どもの気持ちを体感できた」「言葉だけでは伝わらない雰囲気を感じられた」と好評を得たことで、二人は絵で表現する手ごたえを感じた。

 

いずれの絵本も子供の気持ちの理解と対応、家族の病気の伝え方などのポイントをまとめた表、子どもができるいろいろな工夫の例、困ったときの連絡先を書いておくカードなどもついており、とても実践的な内容になっている。

 

必要だったけれど、なかったもの。とても大切なのに、足りなかったケア。医師と看護師という専門家ならではの視点から生まれた絵本は、たくさんの子どもの心をやさしく受け止めて解放し、傷を癒す具体的な方法も教えてくれる。

 

多くのニーズ、ひろがる活動

 

2015年6月には二人を中心に、「NPO法人ぷるすあるは」が設立され、同年8月に精神障害や心の不調、発達凸凹(デコボコ)をかかえた親とその子供を応援する「子ども情報ステーション」も開設された。サイトのユーザー数は2年弱で50万人を突破している。

 

細尾さんの描く絵本の原画展も好評を博し、間もなく第3弾が開催される予定だ(詳細は記事の最後に掲載)。

 

ひろがる二人の活動で、今まで声にならなかった気持ちを言える子どもと、子供の心に気付く大人が増えていくことを願っている。
 

▲絵筆のでこぼこしたタッチが味わい深い細尾さんの原画

 

イベント情報
子どものきもち絵本原画展part.3 ぷるすあるはのチアキのアイデアが生まれるところ
会期:2017年10月17日(火)-22日(日)10時-18時
   ※20日(金)、21日(土)は21時まで
会場:さいたま市プラザノース2F ノースギャラリー1
住所:〒331-0812 埼玉県さいたま市北区宮原町1丁目852番地1


編集:プサラ研究所


 

著者プロフィール

  • アカネヤマ(あかねやま)
  • 医学ジャーナリスト。医学専門紙メディカルトリビューン勤務を経て独立。医師の取材は2000人を超える。2014年「医学をわかりやすく」をモットーに、難しい医学をやさしく伝えるプサラ研究所を設立。医学を正しく伝えることで、医師と普通の人のコミュニケーションがもっとスムーズになればと願っています(写真は地中海に浮かぶプサラ島と島旗)。

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