あるある!こんな状況のとき、あなたならどう対処する?

川野泰周 | 西洋医学と東洋医学の交差点:マインドフルネス(全3回) 第3回

連載最終回では、読者の皆さんが職場で実際に遭遇するかもしれない状況を想定して、マインドフルネスを実践する私から心の整え方をご提案したいと思います。(第1回第2回)。

 

 

ケース1:上司から無茶振りをされた!

 

今日は金曜日、この後の飲み会を楽しみにしています。

仕事を終えて、いざ行こうとしたら上司から呼び止められました。

「来週月曜日の提案の資料を作ってほしい!今日中に仕上げてね」

急なお願いによって残業が確定。

飲み会をキャンセルして、資料を作成するハメに。

1ヶ月前から楽しみにしてたのに・・・・

 

会社の中で働いていると、時として上司から無茶な要求を振られることもあります。

 

仕方ないと思いつつも、イライラしてしまうものですよね。

 

このイライラを抱えたままで行動に移すことはよくありません。

コミュニケーションが雑になったり、情緒が不安定になったり、集中力が続かない状態になります。そうなると、負の感情に支配され、その感情に突き動かされてしまうのです。

 

イライラし続けるか、忘れてしまうか

人間は感情を元に生きています。誰かのせいで思い通りにいかないとき、自分の力でどうしようもないときに、イライラが生まれるのです。これは誰しも持っている感情です。

 

しかし、厄介なことは、そのイライラを忘れられないまま過してしまうことなのです。

 

一つのイライラから負の感情が連鎖して、もっとイライラしたり、不安になったり、ついには泣いてしまった、なんてことはありませんか?いったん負の感情に囚われると、それを忘れようと努力するのは困難なことであります。どこまでも負の感情に追われ続けるような感覚を経験したことがあるはずです。

 

マインドフルネスの世界では、イライラや怒りをそっと心から手放すことを推奨しています。

 

一度、その思いを手放して、目の前の出来事に集中するのです。ここではそれらの負の感情の手放し方を教えましょう。

 

イライラを感じたら6秒だけ待機

怒りの感情との上手な付き合い方を説いているアンガー・マネジメント理論では、怒りのピークは六秒と言われています。

 

ゆっくり深呼吸を三回繰り返しましょう。

 

・怒りのピークが過ぎる

・意識が負の感情から呼吸に向く

・深呼吸に落ち着きを取り戻すことができる

 

深呼吸にこんな効果があって驚かれるのではないでしょうか。

 

呼吸は最高のツール

イライラしているときは、交感神経が優位になっています。交感神経は「戦う神経」であり、過剰なストレスを感じたとき体を興奮状態にするものとして優位に働きます。

 

それに対して副交感神経は「休む神経」であり、気持ちや体を緩める働きをします。そして呼吸は、意識的に二つの神経を切り替えるための唯一の手段なのです。

 

・息を吸うと、交感神経が働きます

・息を吐くと、副交感神経が働きます

 

深い呼吸で落ち着きを取り戻せるのは、息を吐くことで副交感神経が働くからなのです。

一度息を吐ききった後、深く息を吸い込んで、それを吐き切る。

イライラすると呼吸が浅くなりがちになるため、呼吸を深くし副交感神経を刺激するのです。

感情によって呼吸は左右されますが、呼吸によっても感情を左右できると言えるでしょう。

 

ケース2:仕事が忙しすぎて自分では処理し切れない!

 

 

色んなタスクを同時に進めると判断力が低下する

仕事量が多すぎて、参ってしまう。

仕事が多すぎると感じている人は、一つのタスク(課題)が大きいという単純な話ではなく、複数のタスクを並行して処理しようとしています。

結果、様々なタスクを抱え込んでしまうのです。

 

その一方で、人間は同時に複数の課題を処理しようとすると一つ一つについての判断力が低下してしまう傾向があると分かっています。

 

禅やマインドフルネスでは気づきが重要です。

例えば、

「不安になっている自分に」気づく

「呼吸してお腹が膨らんでいることに」気づく

 

など、気づきというものは自分のできること、できないことを改めて認識させてくれるものです。

 

忙しいビジネスパーソンは、「何が問題であり、何を優先しなければならないのか」が把握できていないため、精神的に追い込まれる状況に陥ってしまうのです。

 

タスクを「可視化」する

まずは複数のタスクを書き出しましょう。ごちゃごちゃになって散らかってしまったタスクを目に見えるように整理するためです。

 

例えば、付箋にタスクを手書きし、常に確認できるようにパソコンの周りに貼っておくのです。

一時間以上かかりそうなタスクは、さらに細かく分解します。

人間の集中力には限界があるので、長時間のタスクを目の前にすると「終わらないのではないか」といった不安を感じてしまうからです。

 

タスクを書き出せたら、次に締め切りを書き込み、優先順位をつけていきます。

そうしている中で自分一人では解決できない問題に気づくはずです。

そのときは周りの人に相談してみましょう。

自分では思ってもみなかったアプローチ方法が見えてくるかもしれません。

 

一つのタスクに集中できるメリット

見える化できて、優先順位をつけることができたら早速作業に入ります。

作業中は目の前の一つのタスクだけに集中しましょう。「集中しすぎて全体が見えなくなる」と心配する必要はありません。

見える化して整理したタスクの一覧を眺めればすぐに全体像を把握できるからです。

自分がどこにいるのかを把握できる、いわば地図のような役割を果たしてくるのです。

 

実はこの方法は、「自閉症スペクトラム障害」という発達障害を有する人たちの支援として大変有効です。

自閉症スペクトラム障害の人は、物事の全体を理解し、順序立てて遂行することが特に苦手とされています。

細かく分類され整理されたメモや図を常に確認することで、混乱せずに一つ一つ集中して作業に取り組むことができます。

発達障害の支援でも効果を発揮しているこの方法は、マルチタスクを抱えている現代のビジネスパーソンにもお勧めです。

 

集中した後の達成感はひとしお

禅寺を訪れた人なら、塵一つないほどに掃き清められた庭をご覧になったことがあると思います。

 

私たち禅僧は掃除を大事な修行の一つとしています。あまりにも徹底的に掃除をするので、

「雲水さん(禅の修行僧)が通ったところは通る前よりきれいになる」

と言われるほどです。実は、禅僧は掃除に集中しています。目の前の掃除のことしか考えていないと言っても過言ではないのです。

 

そうして精神を研ぎ澄ませることで、やりきったという達成感が心に満ちるのです。

集中して仕事をこなし、達成感を得ていくことは、やりがいを感じることにも繋がりますね。

次ページに続く

プロフィール

  • 川野泰周(かわの たいしゅう)
  • Kawano Taishu 精神科・心療内科医/臨済宗建長寺派林香寺住職、精神保健指定医、日本精神神経学会認定専門医・医師会認定産業医、RESM新横浜睡眠・呼吸メディカルケアクリニック副院長。
    2004年慶応義塾大学医学部医学科卒業。臨床研修修了後、慶應義塾大学病院精神神経科、国立病院機構久里浜医療センターなどで精神科医として診療に従事。2011年より建長寺専門道場にて3年半にわたる禅修行。2014年末より横浜にある臨済宗建長寺派林香寺住職となる。
    現在は寺務の傍らクリニック等で精神科診療にあたっている。薬物療法や既存のカウンセリングなどに並んで、マインドフルネスや禅の瞑想を積極的に取り入れた治療を行う。またビジネスパーソン、看護師、介護職、学校教員、子育て世代の主婦など、様々な人々を対象に講演・講義を行っている。著書『「あるある」で学ぶ 余裕がないときの心の整え方』(インプレス、2016年)

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