愛すべき悪友、ガブリエーレ

2015年12月24日

スローフード・スローライフの地イタリア*シエナより愛をこめて 第8回

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大切な人ががんであることを知った時、彼がいなくなったらどうしよう? と絶望的になった。でもその気持ちは、自分のために相手を必要とする「エゴ」から来ているのでは? 彼の悪友ガブリエーレが、それをはっきり気づかせてくれた。

奴がいなくなったらどうしたらいいんだ? って考えちゃうだろ、でも・・・


私の大切なパートナー パトリッツィオは、がんの手術を受けた後も熱が下がらず、病院暮らしが続いている。
寝ている彼を起こしてしまったり、診察中に電話を鳴らしたりしたくないから、私からは電話をしていない。

そして、待ち遠しかった電話が入った。

「さっき、ガブリエーレから電話があったよ。
 奴ったら “俺、お前のことを大事に思ってる”と言って、泣いてた。」

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昼のカンポ広場。夜はさらに賑わう。


パトリッツィオとガブリエーレは60年代後半からの友達で、当時、毎晩のようにカンポ広場にたむろし、ガブリエーレのギターにあわせ、夜空に歌を響かせていた。

二人ともどこか癖のある性分で、相手の意見を簡単に認めようとはせず、喧嘩のような口調になるけど、これも男の友情らしい。議論をつまみに、今でも当時の歌を口ずさむ。

ガブリエーレからあふれる強い愛

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イタリア男の友情をたっぷり教えてくれたガブリエーレ。


意地っ張りのガブリエーレが泣いている。

それを知って、私はガブリエーレの声を聞きたくなった。

「チャオ ガブリエーレ。キヨミよ」
「オ~。どうだい?」
「ん~、少し落ち着いてきた」
「そうかい。パトリッツィオは俺のことをどう思っているか知らんが、俺はアイツが好きだ。
 アイツに元気になってもらいてぇ。
 “奴がいなくなったら寂しくなる。どうしたらいいんだ?”って考えちゃうだろ?
でも、俺たちの感情のために、アイツに生きていて欲しい、と考えるのは、エゴだ。
 俺たちの気持ちなんて、どうでもいい。アイツの立場を考えるんだ」
 「うん。分かる」

自分のために相手を求めるのは・・・


昨日、私も同じことを考えていた。
時々、気の合わない人間関係に苦い思いをするけど、パトリッツィオが私を無条件に受け入れてくれるお蔭で、社会に媚びることなく、自分らしくいられた。
でもこの先、彼がいなくなったら、私はどうなるんだろう?
カメレオンのように、周囲の空気に合わせて色を変えながら生きていくのかな?
自信が剥がされていくのかな?
彼が私の話に耳を傾け、褒めてくれて、時には口論しても仲よくなって・・・そうやって愛情で包んでくれたから、心が風邪ひかないのに・・・

ちょっと待った! 自分のために彼にいて欲しいの?
今まで、私をまるごと受け入れてくれて、それで十分、幸せじゃない。
今度は、私が彼に御礼をする番でしょ!
エゴに同情の余地はない。

パトリッツィオはいかにもイタリア人らしく、病気や暗い話題が大嫌いだ。
イタリア語で、がんをcancro(カンクロ)という。また、星座の蟹座も、cancroと言う。
「パトリッツィオ、あなたcancroなんだから」と注意を促すと、
「ノー。 俺はうお座だ!」なんて冗談が戻ってくる。

悪友ガブリエーレの言う通り。
大切な友達のがんに対して、自分の心配を口にするのはやめよう。
相手を思いやるなら、イタリア式に明るい話題で彼の免疫力のアップに励もう! とすこぶる前向きな今日このごろです。

プロフィール

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大多和聖美(おおたわきよみ)
トスカーナ州・シエナ在住。ソムリエ。ワインショップ、小麦粉アレルギー対応レストランでのコック体験を経て独立。「エノテカトスカーナ」を立ち上げ、日本にワインやオリーブオイルの販売を行う。

コメント

    新発田山

    2015年12月25日 10時20分

    新発田山

    パトリッツィオ氏とガブリエーレ氏の深い友情に胸が詰まる思いがしました。
    大切な友人や家族の体を癌が蝕んでいく様を知っている者にはグっとくるわけですが大多和さんの「明るく彼の免疫力アップに励もう」という心意気にもホロっとさせられました。

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