イタリア式、気で病を吹き飛ばす方法

2016年10月13日

スローフード・スローライフの地イタリア*シエナより愛をこめて 第29回

 

人は、病人に対して優しく柔らかく接する。あるいは、病人とはそう接してもらえるもの、と思っていた。それがイタリアであっても、だ。

しかし、急性胃腸炎で苦しむ私に対して親友がとった態度は、「優しくケア」をするのではなく、気の病を吹き飛ばす、という荒療治だった。

 

身も心も萎えてしまう急性胃腸炎

 

ある日、胃の調子がおかしいので、診療所を訪れた。

 

「先生、昨日から食欲がなくて、みぞおちがキリキリ痛むんです。それに吐き気と下痢もあって、体が全くダメです・・・」

それを聞くと先生は「その症状だったらこの薬でバッチリ治る。10日間、飲み続けてください」

とても爽やかな笑顔でストレートに言われたので、大した事ではないことを感じ取り、また、先生の笑顔につられて気持ちが明るくなった。

 

しかし家に辿り着いた頃から、熱が出てきて筋肉痛も加わり、さっき陽が差したはずの心模様は、すっかり鉛色に覆われてしまった。

 

 

愛情があれば、荒療治も効果的


今の私にはトイレとベッドの往復が精一杯。心身共に萎えているところへ、パトリッツィオから電話がかかってきた。

「キヨミ、今、買い物を済ませた。これからキヨミの家に行くからな」

数日間、彼の訪問を拒んでいたが、強制的に向かわれては仕方がない。

 

間もなくして、彼は段ボールを抱えてやってきた。そこには、鳥の丸焼き、ステーキ用の牛肉、バゲット、キノコ、バナナ、ミルク、アイスクリーム、クリームパン、プリン、そして、彼の庭で採れた果実たちがゴロゴロと入っていた。

「栄養をとらなきゃダメだぞ!」

そう言って冷蔵庫に食品を入れている間、私は弱々しく嘆いた。

「私、何にも出来ない。この先も仕事なんて絶対無理。2週間後の日本帰省もキャンセルするわ」

 

すると彼は、

「キヨミは出来る。今まで色々とやってきただろ?どうせ10分後には違う事を言ってるさ」

私はさらに訴えた。

「胃が痛すぎるの。きっと大変なことになってるのよ。病院で検査を受けるわ」

すると彼は「お~、いい加減にしてくれ。大げさに捉えるな!」と大声を上げ、悪戯っぽくクリームパンを私の鼻の下にかざした。

 

私は笑顔んでみたが、すぐにトイレに駆け込み、ベッドに戻った。

パトリッツィオは一人で昼食を済ませると、私の傍らにやって来て、テレビを付けた。

インドの自然、宗教の行事、サルが物乞いをするシーンなど、とても興味深いものだった。番組が終わると、次は、レオナルド・ダ・ヴィンチの絵を分析・解説する番組が始まった。

彼は自分の意見を口にしながら、番組にのめり込んでいる。私もつられて、彼の視点から絵を鑑賞した。

 

番組が終わる頃、私は自分の変化に気付いた。

「パトリッツィオ、胃の痛みはまだあるけど、気持ちがオンになったわ」

彼が帰った後、今朝は1枚のお皿すら洗う気になれなかったが、流しに溜まった食器を全て洗い、続けて掃除機もかけ、モップ掛けもした。ついでに、洗濯物もたたんで部屋はすっきり片付いた。

「私は偉い!ここまで動いたら今日は十分だわ」

 

翌日熱は下がり、仕事にも着手してみた。

 

 

悲劇の仮想ごっこからチャンネルを切り替える


もし、パトリッツィオから優しい声色で「可愛そうに。大丈夫か?」と慰められたら、〈可愛そうで弱い私〉をアピールしたことだろう。

 

もし、誰かが何でもやってくれたら、私はベッドに横たわり、体を動かさない代わりに(どうしよう? どうしよう?)と想像を膨らませていただろう。

 

人を助ける、人の支えとなるには、今回パトリッツィオがしたように、彼のペースを貫き、私の中にこもっていた空気を吹き飛ばして気持ちのスイッチを入れるという荒療治もある事を体感した。

 

ふと、彼が入院した時に周囲の人から言われたことを思い出した。

「キヨミは笑顔で、彼を元気づけなければダメよ」

あの時、私は彼の前でメソメソしていたが、彼の前では気丈に振舞い、彼が抱える心配の雲を吹き飛ばさなければならなかったのだ。

 

 

仕事、大地震、自分の将来の健康などなど、心配事を抱えて生きると、いつの間にか、健康であるはずの自分を、恐怖の世界に生かすことになる。

 

うつ病も、鬱の世界に生きる自分のイメージ化が影響してしまうのだろうか?

 

イタリア人は、よく冗談を言う。それは、場の緊張や不安を和らげるため、張りつめた空気を吹き飛ばす意味で挿入される。

 

心にある心配や不安を掃除すると、今日ある細やかな幸せがよりよく見えてくる。

 

今回の急性胃腸炎は、イタリア風、気から健康を取り戻すコツを学べた貴重な経験でした!

 

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