風邪には意味ナシ?薬局で買える?よく聞かれる、抗生物質のQ&A

2016年04月28日

はぐれ薬学院生(♀)の “しみる” ひととき 第19回


ドラッグストアにいると、様々なお薬のご相談を受けます。なかでも多いのが「抗生物質」。しかも、皆さん、勘違いをしていたり、間違った使い方をしていたりすることが大半です。意外と知らない抗生物質のこと、Q&Aにまとめてみました。

 

Q:抗生物質って何?


Answer:細菌、ウイルス、真菌、寄生虫などの微生物をやっつける薬剤で、ほとんどの場合は「抗菌薬」(細菌に使う薬)のことを指します。

私が所属する研究室が一般人を対象に行なった調査では、抗生物質のことを「熱さましの薬」「痛み止め」「体の免疫を上げる薬」と答える方が少なからずいらっしゃいました。
おそらく、風邪で病院を受診した時に出されたことで勘違いをしたのだと思います。
抗生物質は体の外から進入する微生物をやっつける薬、と覚えてくださいね。

 

Q:風邪に抗生物質は意味がない?


Answer:ほぼYes。

いわゆる“かぜ症候群”に抗生物質は効かないことがほとんど。ただし、二次的な細菌感染を防ぐために処方されることはあります。


風邪の原因はそのほとんどがウイルスによるものです。抗生物質の中にはウイルスをやっつける薬もありますが、かぜの原因となるウイルスに対応するものはありません。そのため、風邪で受診した時に出される抗生物質(細菌をやっつけるもの)は、風邪のウイルスを退治するわけではありません

なぜ意味のない抗生物質を出すのか?一つは、お医者さんがなんとなく習慣で出してしまっているということもありますが、患者さんから「早く治したいから抗生物質を出して欲しい」「せっかく病院に来たのに何も薬がもらえないのは損した気分」といった要望があり、断りきれずに処方してしまう、ということもあるようです。

しかしこれは大きな問題です。本来必要のない人にまで抗生物質を処方することで、薬に耐性を持った菌(耐性菌)が生まれる恐れがあります。耐性菌が増えると、本当に抗生物質が必要な時に使える薬がなくなってしまう、感染が大流行した場合封じ込めが難しくなる、といったことに繋がります。

このような懸念を受けて、厚生労働省が今年の4月に「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」という指針を発表しました。この中では、2020年までに抗生物質の使用量を現在の3分の2に、特に飲み薬については半分まで削減することを目標としています。

ただし、細菌感染が疑われる場合や、基礎疾患がある・高齢などで体が弱っており、二次的な細菌感染のリスクが高いと考えられる場合には、きちんと細菌を殺す目的で抗生物質が処方されることがあります。
ムダなお薬はムダな出費にも繋がります。風邪に抗生物質が出された時は、お医者さんに理由を聞いてみるのも良い手です。

 

 

Q:体調が良くなったら抗生物質は止めても良い?/抗生物質は節約して飲んでも良い?/昨日飲み忘れたので2日分飲んでも良い?


Answer:No!

抗生物質は、指示された飲み方を守り、最後まで飲み切らないと効果が出ません。


薬剤師としてはこれが一番知っておいて欲しいことです。
抗生物質は用法・用量れを守らないと全く意味がなくなってしまいます。解熱剤や鎮痛剤と違い、菌やウイルスをやっつけても飲んだ私たちに何か大きな実感があるわけではありません。そこで治ったと思って薬を止めるという話をよく聞きますが・・・体調が良くなったとしても、まだ体内に細菌やウイルスは残っていることがあるので、出された分の抗生物質は必ず飲み切るようにしてください

また、もったいないからとチビッて量を少なく飲んだり、飲み忘れを取り戻そうと2日分を飲んだりするのは、無意味どころか逆に耐性菌を生み出したり副作用を起こすことにつながるのでやめましょう。

 

 

抗生物質の効き方には2つのタイプがある!


専門的な話になりますが、抗生物質には「血中濃度が高いほど効き目が出る濃度依存性タイプ」と「一定以上の血中濃度を長い時間保つほど効き目が出る時間依存性タイプ」の大きく分けて2つがあります。
濃度依存性タイプの場合、少ない量をダラダラと飲むと、効果が得られないだけでなく、薬剤に晒された菌が耐性を獲得してしまうことがあります。
時間依存性タイプの場合、薬が体内にいる時間がどれだけ長いかが大事なので、一気飲みしても飲み忘れを取り戻すことはできません。副作用も出やすくなるので、決まった量を決まったペースで粛々と飲むしかありません。

 

Q:膀胱炎が辛い!抗生物質の飲み薬は薬局で買える?


Answer:No!

薬局やドラッグストアでは、飲み薬の抗生物質は購入できません(法律で決められています)。


抗生物質は、医師の診断を受け、必要な場合だけ適切な薬を処方してもらうことが大事です。化膿止めや口唇ヘルペスの再発治療薬として塗り薬での市販はありますが、飲み薬は一切市販されていません。というのも、これまでご説明したように、日本では耐性菌の問題が深刻化しています。このため、本当に抗生物質が必要な場合にだけ、必要な量を、医師が都度処方することがルールとなっています。

たまに何かと勘違いして「絶対にあるはずだ!」とめっちゃ渋るお客様がいらっしゃるのですが、無いものは無いのです。

 

Q:胃腸炎で出された抗生物質は口唇ヘルペスにも使える?


Answer:No!

胃腸炎と口唇ヘルペスではターゲットの微生物が全く違うので、効果がありません。


口唇ヘルペスの再発で、塗り薬をお買い求めに来られたサラリーマンの方。飲み薬の抗生物質も欲しいと尋ねられ、市販してないんですと返答したところ、この質問が。
病院に行く暇もないほどお忙しい方だと、手持ちの薬でなんとかできないかと考えたくなりますが、抗生物質の場合は全く無意味です。

胃腸炎には色々な原因がありますが、抗生物質が出されるのは夏場に多い細菌性の感染性胃腸炎でしょう(ウイルス性胃腸炎の場合は対処療法だけになり、有効な抗生物質はありません)。一方、口唇ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス1型という、ウイルスの感染によって起こる病気です。従って、細菌をやっつけるために作られたお薬を、ウイルスに使っても意味がありません。

「じゃあウイルスをやっつける薬ならいいのでは?」…いえいえ、ウイルスの種類によって効くお薬も違います(これは細菌にも言えることです)。
お薬にはそれぞれ使える症状(適応症)が決まっており、基本的には定められたもの以外の症状に使うことはできません。特に飲み薬の抗生物質は、人によって副作用が強く出てしまったり、耐性菌の場合薬が効かないことがあったりと、使いどころの難しいお薬です。

市販できないくらいなのですから、素人判断で使うのはやめておきましょう。

 

 

Q:抗生物質と一緒に整腸剤を出されたけど、市販品で代用できる?


Answer:No!

市販品での整腸剤を使っても、整腸剤の善玉菌が抗生物質にやられてしまって意味がありません。処方された整腸剤を使いましょう。


抗生物質はそのほとんどが細菌を殺す薬と言いました。
細菌を殺す薬の場合、私達の腸に棲む善玉菌も殺してしまうことがあります。抗生物質を飲むと腸内フローラが乱れてしまうことがあるのです。そこで、いつもより善玉菌が減ってしまう分を外から補おうということで、整腸剤(乳酸菌)が処方されることがあります。

たとえば、市販でも有名な「ビオフェルミン」。抗生物質と一緒に処方される場合は「ビオフェルミンR」という名前で出されると思います。じつは、この“R”が肝心です。
抗生物質と一緒に処方される整腸剤は、抗生物質に殺されないように乳酸菌に耐性がつけられています。“R”は“Resistance(耐性)”の略なのです。一方、市販の整腸剤は何も耐性のない乳酸菌でできているので、せっかく使っても抗生物質と一緒では無駄死にして終わりです。

 

抗生物質は「必要なときだけピンポイントに、使い方を守る」ことが大事


最後に、Q&Aから「抗生物質の大事なポイント」をまとめてお伝えします。

1. 風邪に抗生物質は効かないことが多い

2. 抗生物質は、指示された飲み方を守り、症状が収まっても最後まで飲み切る

3. 抗生物質を節約して飲んだり、2日分を一度に飲んだりするのは逆効果

4. 飲み薬の抗生物質は日本では市販されていない

5. 感染源や症状ごとに使えるお薬は違う
(使い回しはできない)

6. 抗生物質と一緒に飲む整腸剤は、市販品では代用できない



感染症の治療は、本人だけでなく、社会全体の問題でもあります。
耐性菌がこれ以上増えないように、抗生物質の正しい知識をもってセルフケアをしましょう!
分からないことがあれば是非お近くの薬剤師さんに聞いてみてくださいね。


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