漢方薬工場見学記:漢方シップは二千年の歴史

2016年04月15日

元気のヒント・松浦優子の台湾暮らし(金曜更新) 第23回

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台南市の漢方薬工場「立康中草薬産業文化館」は「オトナの社会科見学」OK。漢方薬は現在、高度に自動管理された大規模工場でも作られているのです。漢の時代から続く漢方シップは今でも現役商品として愛用されています。

オトナの社会科見学 in台南


台湾で漢方の色々な考え方にふれ、どんどん興味が増してきた私。近年台湾で急増中の、「観光工場」に行ってみることにしました。一般開放されている漢方薬の観光工場をネットで探し、「オトナの社会科見学 in台南」にいざ、出発!

最初の目的地は、立康バイオテクニカル(立康生物科技)が運営する観光工場「立康中草薬産業文化館」。

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▲立康中草薬産業文化館(台南市永康区)

しまった、事前予約が必要だった・・・


はりきって朝一番に着いたのですが、人が全然いません。私のイメージでは、「観光工場」というのは博物館のように常時開放されていて自由に見学できるものだと思っていたのですが、どうなってるのかな?

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▲奥が受付。隣は巨大な物販店


受付らしきところで、「あのう、見学したいんですが・・・」と言ってみると、怪訝そうな顔で「ご予約は?」。あらかじめネットで確認したつもりだったのですが、実は事前予約が必要だったのでした。しまった。

「あ・・・すみません、予約してないです・・・あの、漢方に興味があって、日本から来たんです・・・」とちょっと上目遣いな感じで言ってみると、「日本から、一人で?!」と驚いた顔。「ちょっと待っててね」と、どこかへ行く受付のお姉さん。
長らく台湾に接しているとわかるのです。こういう時は、ダメもとでとりあえず押してみると、結構大丈夫なことが多いのです。

案の定、受付のお姉さんは白衣を着た別のお姉さんを連れて戻ってきました。「じゃあ、彼女が今からご案内しますね」。ほらね。しかし案内とは・・・?
「自由に中を見学するんじゃないんですか?」と聞くと、「バスツアーなどの団体で来られる方がほとんどで、必ず案内人を付けています」とのこと。

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▲参観パス無事ゲット。入場は無料

完全個別ガイドの工場見学、漢方シップは2000年の歴史


「こちらです」と、建物の入口に私を通し、パチパチと電気をつけるお姉さん。うわあ、すいません私一人のために・・・。中には、この会社が最初に手掛けた漢方シップ薬についてのパネル展示がありました。「ここは写真撮っていいですよ」とのこと。

漢方薬というと「飲み薬」のイメージが強かったのですが、外用薬ももちろんあります。シップ薬に関していうと、その歴史は漢代(紀元前206年~紀元後220年)にまでさかのぼります。むむ、2000年近い歴史とは!

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▲伝統的な漢方シップは緑色


パネルの前で、一つ一つぎっちり説明をしてくれるお姉さん。確かに非常に興味深いのですが、このペースでいったら何時間かかるんだろうと不安に駆られる私。(この日、他にも数ヶ所を回るつもりだったのです)しかし、マンツーマンなので逃げられません。諦めて、とことん教えてもらう方針に変更しました。

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▲材料いろいろ。漢方シップ薬には水性と油性がある

「科学中薬」の製造ラインを見学!


漢方シップの歴史を学んだ後は、現在この会社が作っている「科学中薬(科学漢方薬)」製造ラインの見学です。

漢方薬というのは本来、その薬材を自分で煎じたりなどして飲むものです。材料から薬効を抽出するための工程を「炮製(パオジー)」と言い、お湯で煎じる以外にも、蒸す・焼く・酒やハチミツと一緒に煮てエキスを移すなど、非常に多くの方法があります。これをきちんとやらないと、漢方薬としての薬効は台無しになってしまいます。しかし、厳格な管理が必要で本当に大変です。

そこで、現在普及しているのが「科学中薬(科学漢方薬)」。日本では「漢方エキス製剤」などと呼ばれます。複雑な「炮製(パオジー)」の方法を分析・研究し、できるだけ薬効を引き出しつつ、工場で大量生産を可能としたものです。粉末や液体、錠剤、薬用酒タイプなどがあります。

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▲漢方大手・順天堂の科学中薬。日本の順天堂大学とは無関係


それぞれの漢方薬に適した加工方法により、抽出・濃縮・粉末化などがオートメーションで行われています。ちなみにここも、長い廊下の電気をつけつつ、通り過ぎては消しつつという貸切状態。恐縮しきりです。

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▲漢方薬濃縮用タンク。抽出方法に合わせてさまざまな設備が用意されている


この後、この会社で昔使われていた漢方薬製造マシンなどの展示エリア(ここは撮影不可)を見学し、1時間以上にわたる工場見学ツアーは終了。ありがとうございました。

漢方シップの使い心地は・・・


西洋薬のシップ薬が消炎・鎮痛作用に特化し、化学成分を含んでいるのに対し、漢方シップの材料は100%植物由来。西洋シップと違い、多量摂取で肝臓など内臓への悪影響が出るとされる非ステロイド性抗炎症薬の一種・ジクロフェナク(Diclofenac)も入っていません。漢方シップは、鎮痛作用のほかに、経絡の流れを整える・「気」を増やすなど、漢方ならではの薬効もうたっています。

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▲台湾で買った漢方シップ。茶・緑・白と全部色が違う


実は今、この原稿を打ちながら、ガチガチになっている両肩にこの漢方シップを貼っています。香りはずばりハッカで、そんなにきつい香りでもありません。いつも使っている西洋シップは貼った瞬間からひんやり感がぐんぐん体に染み込んでくるのに対し、漢方シップは最初、まったく刺激がありませんでした。

でも、5分ほど経つと、西洋シップに負けないほどの強烈なひんやり感が。そしてそのひんやり感は6時間以上続いています。西洋シップよりもやさしく長く効く感じです。

ちなみに、各社使用している漢方薬材料は違っていて、ハッカ油は共通、あとは大黄・甘草・ミツロウ・木鼈子(もくべつし:ナンバンカラスウリ)・威霊仙(いれいせん:シナボタンヅル)・アロエなど、10種類以上の材料の名前が表示されています。

今でもお年寄りを中心に根強い人気があるという漢方シップ薬。台湾のドラッグストアのシップ薬売場には、今でも現役で並んでいます。

プロフィール

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松浦優子
東京都出身。Web広告ディレクターとして勤務後、ひょんな縁で台湾・台北に語学留学し、すっかり台湾に魅了される。帰国後に日本語教師資格を取得し、現在は外国人向け日本語レッスンや台湾現地ニュースの日本語翻訳などを手掛ける。その後も台湾には年数回のペースで訪れ、一年のうち約1か月は台湾に滞在。現地の友達との旧交を温めつつ、もっと深く台湾を知るべく取材活動を行っている。

 

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