漢方薬工場見学記パート2:漢方食材と漢方薬の間

2016年04月18日

元気のヒント・松浦優子の台湾暮らし(金曜更新) 第24回

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漢方薬を知るための「オトナの工場見学」第2弾レポート。漢方薬づくりには良質な原料と厳密な精製が欠かせません。今ではその効果が認められ、欧米でも「植物薬(plant medicine)」として人気となっていることを知りました。

広大な南部科学工業園区に、その工場はあった


「漢方薬を知ろう!オトナの社会科見学in台南」、2ヶ所目は台南市の「南部サイエンスパーク(南部科学工業園区)」。IT部品大手企業の工場などが立ち並ぶ地区で、その面積はなんと約1000ヘクタール。東京都の中央区や台東区と同じくらいの大きさ、と言えばスケール感が伝わるでしょうか。とにかく広い。

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▲距離感がわからなくなる広大な工場地帯、「南科」


その中に、台湾の漢方製剤・サプリ大手の「港香蘭応用生技(Biotanico)」の工場もあります。サイエンスパーク循環バスに乗り、最寄りのバス停から10分弱歩いたところで見えた建物は・・・巨大でした。

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▲港香蘭応用生技(台南市新市区)。建物が巨大すぎて半分も入らない


というか、ここ普通に会社&工場ではないですか。観光工場である「港香蘭緑色健康知識館」の看板もありません。私のような外国人が一人でふらっと来ていい場所とは到底思えない。そもそも観光地ですらない。でも引き返す訳にもいきません。突撃~!

またもや飛び込みの貸切ツアーに


台湾生活で得た一番大きな変化は、「図太くなったこと」だと断言できます。正門横の守衛室のおじさんに「あの、見学したいんですけど」と話しかけてみます。

ネットで見た観光工場の一覧情報ページには「要予約」とは書いていなかったのですが、企業サイトの方には書いてあったんですよね。確認不足ですみません。皆さんが行かれる時は事前にきちんと予約をなさってください(いや、行かないか・・・)。

守衛さん、びっくりしつつも電話で確認してくれました。曰く、「今、担当の人がごはんに出ちゃってて1時半まで帰って来ないんだよ。」・・・あ、ちょうど昼過ぎでした。私は厚かましくも「それなら私もどこかでごはんを食べようと思います。どこかに飲食店はありますか?」と相談。
「うーん、一番近くだと、歩いて20分くらいのところに施設があるね。」
さすが、広い。

教えてもらった施設でごはんを食べ、20分歩いて戻ってくると、女性職員が対応してくれました。「一人で来た人なんて初めてですよ・・・」
そうでしょうとも。

欧米でも人気の漢方、漢方食材と漢方薬の違いとは


ここは、写真撮影OKなのは入口横の物販コーナーのみでした。 まずはそのかたすみでたった一人、15分間の企業紹介ビデオを見せられる私。やっぱり普通は団体で来るんですよね・・・。

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▲自社製品販売コーナー。ここで買うと全品1割引


飛び込みだったにも関わらず、「漢方に興味があるんです!」という私の言葉に、「よっしゃ!」とばかり、色々教えてくださった担当者の方には本当に感謝です。

この会社の歴史は、1892年に台南で創業された漢方薬局から始まります。現在は科学中薬とサプリメントを手掛けており、この工場ではサプリメントを製造しています。アジアはもとより世界中に輸出されており、ドイツにも販売拠点を持っています。

「えっ、欧米の人が漢方薬を飲むんですか???」
「そうですよ。医療費が高い欧米では病気予防への意識が高く、漢方薬はナチュラルで副作用の少ない『植物薬(plant medicine)』として、とても人気が高いんです。欧米では、粉薬よりも飲みやすいカプセルタイプが人気ですね。」
なるほど。むしろ日本人の方が西洋薬に偏りすぎているのかもしれないなあ。

ここで、私はかねてから気になっていた質問をぶつけることに。
「台湾では、漢方食材を使った料理が日常的に食べられていますよね。その時に使う漢方食材と、漢方薬はどう違うんでしょう?」

即答でした。きっぱりと、
「薬効(ヤオシャオ)が全然違います。」

市販されている「漢方食材」と、漢方薬工場が原料として使っている「漢方薬材」は、同じ植物でも品質が雲泥の差なんだそう。そして、漢方薬の効能を引き出すには、良質な材料と適切なバランスでの調合、そして正しい精製「炮製(パオジー)」が必要不可欠。(「炮製」は、前回も出てきましたね。)
例えば、「煎(煎じる)」にしても、温度や時間、火加減など、漢方薬材によって細かく決まっているのです。これをきちんと守らなければ薬としての効き目は激減。

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▲台北の伝統的な漢方薬局前で。漢方薬を煎じるには長い時間がかかる


漢方薬工場には、高さ10メートル以上の巨大装置がいくつも並んでいます。
「例えばこのラインでは、40~60度の間で温度調節をしながら、真空低温濃縮という方法を採用しています。これがこの薬材において最も薬効を引き出せる方法だからです。」

炮製(パオジー)は非常に奥が深く、それによって、
◆漢方薬材の性質を変えたり、効果を増幅したりする
※例えば甘草(カンゾウ)は、そのままの状態では「涼性」で解熱・解毒に効くが、ハチミツを加えて煎じることで「温性」に変化し、「気」の補給効果が生まれる。
◆毒性や副作用を抑える
※トリカブトなどの毒性植物も、加工して毒性を抑えることにより薬になる。
◆保存性を高める
◆飲みやすくする
ことなどができます。

そして、この伝統的な「炮製(パオジー)」を参考に機械精製の技術を開発し、工場生産で可能な最大限の薬効を持つ製品に仕上げる。これが「科学中薬」の世界。

長い歴史の中で育まれ、誇りをもって伝えられている漢方医学


見学コースの最後には、古代中国の漢方医たちの肖像画が飾られていました。漢方医学への敬意と誇りが感じられます。

「私、台湾に来てたくさん漢方にふれて、今の日本は西洋薬や対症療法に頼りすぎていると感じるようになったんです。」と言うと、担当のお姉さんはこう答えました。

「そうかもしれませんね。確かに西洋薬は“科学的”で信頼できるものです。漢方薬材には、例えば、鹿の角や亀の甲羅なんてものまであります。そんなものに効果があるのかと、疑いたくなるかもしれません。」

でも、と担当の方は言葉を続けます。

「でも、漢方医学も、数千年にわたる長い歴史の中で、研究され、絶えず効果を検証しながら体系化されてきたものなんです。これほどの長い時間信頼され続けているということには、やっぱり理由と合理性があるんですよ。」

私たちはこの漢方の力を信じて薬を作り続けているんです、と言った時の担当者の方の清々しい笑顔が本当に印象的でした。

漢方医学と漢方薬への認識がぐっと深まった気がする「オトナの社会科見学 in 台南」、非常に充実したものでした。帰りのタクシーを呼んでもらう間には、守衛のおじさんの「西洋医で全然治らなかった腰痛が、鍼ですっかり治ったんだ! 中医学サイコー!」という話で盛り上がりました。

プロフィール

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松浦優子
東京都出身。Web広告ディレクターとして勤務後、ひょんな縁で台湾・台北に語学留学し、すっかり台湾に魅了される。帰国後に日本語教師資格を取得し、現在は外国人向け日本語レッスンや台湾現地ニュースの日本語翻訳などを手掛ける。その後も台湾には年数回のペースで訪れ、一年のうち約1か月は台湾に滞在。現地の友達との旧交を温めつつ、もっと深く台湾を知るべく取材活動を行っている。

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