貧血と氷好きー見過ごして後悔したくない身体の悲鳴3

2016年04月13日

小児科医 Dr. しろくま子の“みんなも知っていたらいいのにと思うこと”(水曜更新) 第12回

 

本人や家族が好みのせいだと考えている習慣が、病気の症状だった、ということがあります。こればかりは知らないと疑いようがありません。ただ不思議に感じたら、医師に話してみてください。今回も経験した実例を挙げて説明します。

 

冷凍室の氷がおいしい?

 

風邪をひいて近所の医院にかかり、心臓の雑音を指摘された学生の話です。紹介状を持ってお母さんと来院。ひょろりとした彼、確かに心雑音が聞こえました。わたしは循環器が専門ではないので、さっさと担当の外来への予約を考えていました。ところが、お母さんが「この子って氷ばっかり食べるんですよ」と言ったのです。「かき氷とかじゃなくて、ただ水が凍っているだけの氷です。帰ってくると冷凍庫をあさっているんですよ。運動部で汗かいてばかりいるせいだからですかね?」と。本人は「だって氷、うまいから」と。お母さんは「まあ、そうね」と同意して笑いました。

 

少し気になっていた習慣を告げたことが、診断のきっかけに

 

あらあら、お二人して氷が好きですって。小さな会話で診察が仕切り直しです。考える方向がガラリと変わりました。詳しい血液検査を行い、母子ともに鉄欠乏性貧血と診断。鉄剤を飲んで栄養相談を受けてもらいました。
氷を好むのは貧血の症状です。貧血の際にはよく心雑音が聞かれます。ヘモグロビンが低くて酸素を運ぶ力が落ちているぶん、心臓が頑張っているわけです。この時はお母さんが風変りな習慣を教えてくれたから、確信をもって最短距離で答えにたどりつけました。

 

徐々に進む貧血は気づかれにくいもの

 

例に挙げた少年とママは、かなりの貧血でしたが何も自覚していませんでした。ゆっくり進行すると日常生活を続けられるようです。身体が慣れて気づかないのでしょう。数値を前にしてびっくりすることがあります。朝礼で倒れるとか、立ちくらみがするとか、意外と言われないのです。体力にゆとりがあるほど、症状をこらえられるのでしょう。他の理由で採血して貧血が見つかることも多くあります。心雑音と氷を食べる癖は比較的わかりやすいサインなのかもしれません。

 

鉄不足、潰瘍と貧血

 

さて、貧血を診たときには、十分な血が作られていないのか、出血で失われているのかを考えます。原因として多いのは、鉄が足りなくて作られない、胃潰瘍などで出血している、という二つのパターンです。
例のように家族同時であれば食事での鉄不足が疑われます。もちろん便の検査をして、胃腸から血液が出ていないかも確認します。ちなみに便が黒っぽく見える場合、胃から出血していることを疑います。時間をかけて便に出てくるので、赤ではなく黒っぽく見えます。
つまり、貧血が胃潰瘍診断のきっかけになりうるわけです。穴があく前に気づいて、是非とも飲み薬だけで(手術せずに)治療したいものです!

 

鉄分を摂ろう、とよく言われるけれど

 

実際はなかなか難しいですよね。量だけでなく吸収されやすさも考えると、また話は複雑になって大変です。サプリメントより食品のほうが吸収されやすく、しかもお肉のほうがいいと言われています。特に月経の重い女性、成長期(赤ちゃんも)などは、鉄の需要が大きいため、積極的に摂らないと間に合わないことがあります。高校生になって給食がなくなったら、栄養の偏りによる病気を発症した例もあります。なんとなくカロリーを維持しているだけでは、なかなか元気でいられないようです。鉄に限らず、三食の内の一回はぜひ栄養を意識した献立を!

さて、身体が示す小さなサインについて、様子を見てよいかどうかの判断は難しいと思います。ただ「これはふつうではないな」と感じることはあるのではないでしょうか。その場合、長く悩みを抱えずに、相談してみるのがよいと思います。職場健診などでさらりと話してみるという方法もあります。医師が持つ常識に照らし合わせると、それは急ぎましょうと言われるかもしれません。

 

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