ボケは40代に始まっていた〜その4 アルツハイマー治療の鍵は早期発見

2016年02月16日

 

 

日本でも世界でも増えている認知症患者。その対策はどこの国でも危急の課題となっています。現在では根本的な治療法はまだ見つかっていませんが、日々研究は進んでいます。その最新事情を紹介します。

アルツハイマー病に効く薬とは

 

厚生労働省が2015年1月に発表した資料によると、日本の認知症患者数は2025年には700万人を超えると推測されています。これは、65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症になることを表しています。にもかかわらず、認知症の根本的な治療法はまだ見つかっていません。
私たちの脳の神経細胞はシナプスでつながっていて、その間に神経伝達物質が働き情報が伝わっていきます。アルツハイマー病特有の記憶障害は、脳内の情報回路が遮断され、メッセージがうまく伝わらない状態といえます。
現在、アルツハイマー病には4種類の薬が使用されています。その一つ、1997年に創薬に成功した「アリセプト」は、神経伝達物質の「アセチルコリン」が、分解酵素の「コリンエステラーゼ」と結合して減少するのを食い止め、一時的に症状の回復や進行を遅らせることができる薬です。
続いて、2011年に発売された「レミニール」と「エクセロン」もコリンエステラーゼの働きを阻害する薬です。「レミニール」には「アリセプト」より作用期間が長いという報告もあり、「エクセロン」は貼り薬という特徴があるなど、認知症治療薬の選択肢を広げています。「メマリー」は興奮性の神経伝達物質「グルタミン酸」が、アルツハイマー病の脳では過剰に放出されている点に着目した薬です。

これらの薬には、病気の進行を遅らせ、改善する効果がありますが、根本的な治療は望めません。アルツハイマー病の原因物質を脳内から除去、あるいは生成を阻害する薬の開発が、根本治療への道につながると予測されています。

 

早期発見が鍵になる

 

βアミロイドは健康な人でも40代後半から溜まり始めます。その分解がうまくいかなくなるのはいつか、アミロイドの蓄積がタウたんぱくのリン酸化を促進するのはどの段階か、タウの凝集で神経原線維変化が起きるのはいつか、これらの相関関係を解明することで、アルツハイマー病の予防と対策が見えてきます。
その鍵はMCIの人──アルツハイマー病ではないが軽度の認知障害が認められる人が握っています。

 

アルツハイマー病が進んでしまうと、神経細胞の死滅が激しく、容易なことでは修復できません。認知症の兆候に気づいたら、日常生活がふつうに送れるうちに治療を開始すれば、本人にも自覚があるため積極的に治療に取り組むことができるでしょう。早い段階で認知症の進行を遅らせることができれば、自立した生活を長く送ることができ、家族の負担も軽減されます。仮に症状が徐々に進んで介護が必要となっても、そのための環境整備や気持ちの準備もできます。

現在では、アミロイドの蓄積やタウたんぱくの状態を画像で知ることができます。症状が出る以前(MCIの手前)に、脳の変化を食い止める先制攻撃ができるようになれば、アルツハイマー病克服への道が開けていくでしょう。

 



◆参考図書:『ボケは40代に始まっていた』西道隆臣 編著(かんき出版)

プロフィール

 
西道 隆臣(さいどう・たかおみ)
 

理化学研究所脳科学総合研究センター神経蛋白制御チーム シニアチームリーダー。日本認知症学会理事。早稲田大学客員教授、横浜市立大学・日本女子大学・千葉大学・東京大学・名古屋大学・筑波大学・東北大学で教鞭をとる。筑波大学生物学類卒業、東京大学大学院薬学系研究科修了、薬学博士。

 

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