おたふくかぜのワクチンは本当に打って大丈夫? 一生治らない重病からこどもを守るには?

2016年01月06日

はぐれ薬学院生(♀)の “しみる” ひととき 第7回

 

 

おたふくかぜの流行が問題となっています。おたふくかぜは軽くみられがちですが、実は有効な治療法がないうえにとても重い合併症を引き起こす怖い病気です。おたふくかぜの予防に効果的なワクチンは、自分で希望しなければ受けることができません。

 

 

毎年必ず流行するおたふくかぜ、重症化すると一生治らない難聴も

 

おたふくかぜはほっぺたが腫れるだけのかぜだと思っていませんか?

それは違います。おたふくかぜは、重症化すると入院が必要になったり、合併症によって一生治らない後遺症が出たりする、重い病気なのです。

おたふくかぜは、正式名称を流行性耳下腺炎といって、ムンプスウイルスの感染によっておこる病気です。4歳前後のこどもの感染が圧倒的に多く、幼稚園のような集団生活の場では毎年必ず流行すると言われています。

症状は、名前のとおりほっぺたから顎のあたり(耳下腺)が腫れて、圧すと痛くなります。また、ものを飲み込むときにのどが痛くなったり、熱が出たりすることもあります。症状は大体1〜2週間で軽快するものの、学校に通っている場合は所定の期間欠席しなければなりません。

おたふくかぜが怖いのは、合併症です。最も多いのが無菌性髄膜炎で、50人に1人の割合で起こります。強い頭痛や嘔吐が起こるため、小さいこどもにはとても辛い病気です。また、1000人に1人の割合で重度の難聴が起こっています。これは一生治らない難聴ですが、おたふくかぜの治療は熱を下げるような対処療法しかありません。他にも脳炎や、思春期の感染では精巣炎や卵巣炎の合併症が起こりますが、これらを防ぐ手立てはありません。

おたふくかぜは予防がとても大事なのです。

 

感染パーティーは絶対にダメ! おたふくかぜはワクチンで90%予防できる

 

 

感染パーティーという言葉はご存知でしょうか。

ワクチンに頼らず自然に免疫を付けたいと考える人が、わざと感染した人のそばに近づいて「病気をもらおう」というものです。特に、「こどもにワクチンは打たせたくないけど免疫はつけさせたい」「こどものうちにかかっておいた方が軽症ですむ」と考える親が、こどもを感染パーティーに連れ出すケースが多いようです。

しかし、これは大変危険な考え方です。もともと、感染パーティーはワクチンがまだない時代の人々が行っていた古い風習です。ワクチンは、感染しなくても免疫をつけられるように、病原体の毒性を減らしたり、全く毒性が無い様に加工したりして作られたものです。なぜわざわざワクチンを作る必要があるのかといえば、感染すると重症化して命を落とすおそれがあるからです。

感染パーティーは、自分のこどもをわざと危険な車道で歩かせるようなもの。また、病気を「おすそ分け」してくれるお友達にも負担がかかります。本当はゆっくり体を休めなくてはいけないのに、パーティーで余計に体力を消耗させるのはかわいそうですよね。

ワクチンは、おたふくかぜを予防する唯一の手段で、予防効果は90%程度あると言われています。

 

 

おたふくかぜのワクチンは本当に打って大丈夫? なんで定期接種じゃないの?
ワクチンで自閉症になるってほんと?

 

 

現在、おたふくかぜのワクチンは、任意接種(自分で希望してうける予防接種)で、全額自己負担となっています。費用はこどもだと5000円前後です。

世界ではおたふくかぜワクチンは定期接種(かならず受ける予防接種)となっていて、日本のように流行することはあまりありません。一方、日本では希望した人しか受けられないうえに、おたふくかぜの怖さもあまり知られていないため、毎年約60万人もの人がおたふくかぜに苦しんでいます。

 

実は、日本では一時期、おたふくかぜワクチンが定期接種だった時期がありました。当時は麻疹と風疹のワクチンとあわせた三種混合のワクチンという形で提供されており、「MMRワクチン」という名前でも呼ばれていました。

ところが、「髄膜炎菌性髄膜炎」という副反応が問題となり、定期接種は取りやめとなりました。この副反応の原因はおたふくかぜワクチンにあると考えられています。そのため、現在は麻疹・風疹の2つを合わせたMRワクチンが定期接種となり、おたふくかぜワクチンだけが任意接種となっています。

このような経緯があるので、髄膜炎を気にしておたふくかぜワクチンを受けない、という方もいらっしゃるようです。まあ副反応の出る可能性はゼロではないので、ワクチンはいやだ、という意見は、それはそれで個人の自由として尊重されるべきでしょう。

しかし、おたふくかぜのワクチンを打って髄膜炎になる確率は、ワクチンを打たずにおたふくかぜに感染して髄膜炎になる確率よりも、ずっと低いのです。

海外の報告では、髄膜炎の発症頻度は自然感染時で1〜10%であるのに対して、ワクチン接種時は0.001%以下〜0.3%となっています。日本でも同じような結果が報告されています。

この数字を見たら、自分のこどもを感染パーティーでおたふくかぜにさせて、かかった治療費を払うより、5000円を出してワクチンを打たせた方が、こどもにも家計にもやさしいと感じる方のほうが多いのではないでしょうか。

また、「MMRワクチンで自閉症になる」という研究結果が報告され、話題となったことがありますが、これはまったくのデタラメです!!

この研究は捏造であったことが後に発表され、論文を掲載した英医学誌も論文を撤回しています。(このことについては、また別の機会に詳しくお話ししたいと思います。)

 

 

日本は「ワクチン後進国」—こどもの将来をまもるために

おたふくかぜワクチンの大切さ、わかっていただけたでしょうか。

日本は先進国の中でも珍しく、おたふくかぜワクチンが定期接種になっていない国です。日本は「ワクチン後進国」とも言われており、自ら動かないと感染症の予防も満足にできない国として世界では認識されているのです。

★ 現在、おたふくかぜワクチンを再び定期接種化しようという意見が上がっています。日本小児科学会も、おたふくかぜワクチンの早期の定期接種化を厚生労働省に要望しています。

★化血研によるワクチンや血液製剤の製造方法が問題となっていますが、おたふくかぜワクチンに関しては、現在日本国内で化血研製品の取り扱いはありません(参考文献3)。また、その他の感染症のワクチンに関しては、厚生労働省が安全性の確認や代替品がないか検討した上で出荷可能かどうかの判断を行っています(参考文献4)

 

<出典・参考文献>
1) 国立感染症研究所 感染症情報 流行性耳下腺炎(ムンプス、おたふくかぜ)
2) 国立感染症研究所「おたふくかぜワクチンに関するファクトシート」(平成22年7月7日版)
3) 一般社団法人 日本ワクチン産業協会 「国内で販売されているワクチン等と取り扱い会社(平成27年10月現在)」
4) 「一般財団法人化学及血清療法研究所の製造するワクチン製剤等に関する意見」平成27年10月21日 厚生科学審議会感染症部会決定

コメント

この記事へのコメントはありません。

この記事の関連ワード

新着の記事

Sidekibit b fefa1c4699a4986147a527399409cd3c5417e373a7c81d98947fd955971daf54

人工知能KIBITが、あなたに合った記事をおすすめします。 初めてKIBITに教えた時は翌朝までお待ちください。