「生存年損失」で死亡率の傾向を測定する

山野秋生 | 世界の論文から見える最新の健康・栄養ニュース 第17回

早世によって失われた年数である「生存年損失」を考慮することで、死亡率の傾向をより的確に把握できるようになるかもしれません。死亡率の年次推移や異なる集団間の分布についてのより完全な全体像を把握できるということです。

 

 

米国クリーブランドクリニックの研究チームは、「生存年損失」(推定平均寿命から死亡年齢を引いた年数)を考慮することによって、単に死亡者の数だけをみるよりも、死亡率の傾向をより良く理解できるようだ、と『米国公衆衛生雑誌』に発表しました。

 

この研究は、米国における上位15件の死因について、1995年から2015年にかけての生存年損失を計算し、各々の死因の死亡者数と比較し、その違いの原因を探ったものです。

 

生存年損失は疾病負荷の不均衡を浮き彫りに

 

「死亡によって失われた年にフォーカスすることで、疾病の社会的負担についての新しい見方をもたらし、疾病負荷の不均衡が浮かび上がります」と筆頭研究者のグレン・タクスラー博士は語っています。「生存年損失によって死亡率を並べ直すことで、死亡率の年次推移や異なる集団間の分布についてのより完全な全体像を把握できるのです。」

 

たとえば、米国人の死因として最も多いのは心疾患ですが、より若年で死亡するために失われる寿命の残りが長いがんのほうが、より重要であると考えることもできます。2015年に心疾患で死亡した人は、がんで死亡した人より6%多いだけ(635,310人と596,730人)だったのに対して、生存年損失では、がんの方が心疾患より23%も多かったのです(9,260,413年と7,529,750年)。

 

治療法の進歩の違いも明確に

 

この分析法ではまた、心疾患とがんに対する治療法の進歩にみられる違いもはっきり浮き彫りにされています。動脈硬化性冠動脈疾患は、1次予防、2次予防の改善と、血管形成術やステント留置術など急性期治療の進歩によって、1995年以来急性心筋梗塞による生存年損失が42%低下しています。

 

心疾患の達成と対照的に、がんの生存年損失は1995年から2015年の間に16%上昇しましたが、その主な理由は、米国の中年層の人口が増加したことによるものです。生存年損失が減少したのは6種類のがんだけであり、がんの生存年損失を減少させるには、致死率の高いがんの集団レベルでの生存率をもっと高める必要があります。

 

生存年損失を考慮することで、特に若年層に大きな影響を及ぼすいくつかの死因が浮き彫りになります。たとえば、過剰薬物による死亡が増加し、過去20年の間にHIVの予防と治療の進展で得られた生存年損失の減少は、不慮の死による生存年損失の増加によって相殺されています。

 

また、人種間格差も明らかにされています。心疾患の予防・治療における進歩はほぼ白人に限定されているため、黒人男性の生存年損失は、(中年層の増加と平均寿命の延長によって)20年の間に20.8%増加しています。

 

今後の活用が期待される

 

研究チームによれば、生存年損失は新しい概念ではないが、今まで主要死因別の長期死亡率年次推移の評価に使用されることは稀だったということです。

 

「生存年損失を通して死亡率の推移を見ることは、私たちに心疾患やがんの予防と治療について、あるいは薬物依存の防止といったことについて、今後の進歩が極めて重要であることを教えてくれます」とタクスラー博士は語っています。「私たちはこの考え方が、公衆衛生分野における研究費配分の優先順位を決定し、死亡率の低下に対する進歩を見定める上でベストの情報源だと信じています。」

 

出典:『米国公衆衛生雑誌

編集者プロフィール

  • 山野秋生(やまの あきお)
  • 薬学博士。専門は栄養学。科学的根拠に基づいた栄養と健康に関する知識の普及および啓発活動に努める。ダイエットアプリ『Mealthy』の理論面のサポートも担当。《ダイエットアプリ》 Mealthy

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