赤身肉の食べすぎは2型糖尿病の発症リスク上昇:ヘム鉄含有量が関与

山野秋生 | 世界の論文から見える最新の健康・栄養ニュース 第15回

牛肉や豚肉などのいわゆる赤身肉と鶏肉などの家禽肉は2型糖尿病の発症リスクを高めるようだ、というアジア人を対象とした大規模疫学研究の結果が報告されました。研究者らは、赤身肉の摂取を減らし、鶏むね肉や魚介類に代えることを推奨しています。

 

 

牛肉や鶏肉などの肉類の摂取は、2型糖尿病のリスクを高め、それは肉に含まれるヘム鉄が原因の一部であるようだ、という研究結果が発表されました。これはシンガポール中国人健康研究のデータを解析した結果です。

 

一般にお肉の食べ過ぎは身体に悪いと言われていますが、すべての種類の肉が同じように身体に悪いわけではありません。デュークNUS大学医学部のコー・ウーン・ピュアイ教授とその研究チームは、赤身肉(牛肉や豚肉など)と家禽類(鶏肉やターキーなど)の肉をたくさん食べることと2型糖尿病の高い発症リスクの間には統計的に有意な関連がみられ、それは肉に含まれるヘム鉄の含量が部分的には関係していることを発見したと『米国疫学雑誌』に発表しました。

 

この研究は、シンガポールで科学的根拠に基づく食事摂取基準を策定する上で極めて示唆的であるだけでなく、同じアジア人集団の結果であることから、日本人の食事摂取基準にとっても大きな意味をもつものだといえます。日本人の糖尿病有病者と糖尿病予備軍が共に約1千万人と推定されており(平成28年国民健康・栄養調査)、今後予防対策がますます重要になることが考えられます。

 

6万人以上のアジア人を11年間追跡調査

 

『シンガポール中国人健康研究』は45-74歳の63,257名を1993年から1998年にかけて集め、その後平均11年にわたって追跡調査したものです。この研究では、赤身肉、家禽肉の摂取量と、2型糖尿病の発症率の間に正の相関関係をみつけました。摂取量が最も少なかった人々に比べて、最も多かった人々は、2型糖尿病の発症リスクが、赤身肉の場合で23%、家禽肉の場合で15%高かったことがわかりました。魚介類の摂取量と2型糖尿病の間にはそのような相関関係はみられませんでした。赤身肉と家禽肉による2型糖尿病リスクの上昇は、魚介類の摂取によって低下することもわかりました。

 

ヘム鉄の関与が強く疑われる

 

2型糖尿病の発症において、赤身肉や家禽肉が関与するメカニズムを明らかにするために、研究チームは食事に含まれるヘム鉄(酸素を運搬するたんぱく質ヘモグロビン結合した鉄)の量と2型糖尿病リスクの関係を解析した結果、食事中のヘム鉄の含量と2型糖尿病リスクの間には用量依存的な正の相関関係があることがわかりました。

 

食事中のヘム鉄の含量の影響がなくなるように統計的に調整しても、赤身肉摂取と2型糖尿病リスクの間には関連がみられたことから、研究チームは赤身肉にはまだ他の化学物質の関与があるのだろうとしています。ところが、家禽肉摂取と2型糖尿病リスクの間の関連は消失したので、家禽肉の2型糖尿病リスクはヘム鉄が原因であろうと研究チームは示唆しています。

 

牛肉・豚肉より、鶏むね肉や魚介類を推奨

 

本研究は肉類の摂取と2型糖尿病リスクについてアジア人を対象に検討した最大級の研究のひとつです。本研究は、肉の摂取とヘム鉄の摂取が共に2型糖尿病のリスクを高めるという点では、欧米におけるこれまでの研究結果と一致していますが、ヘム鉄以外にも赤身肉にはリスクを高める成分があると主張する点では異なっています。また、鶏肉は、ヘム鉄の少ないむね肉のほうがもも肉よりも健康的であること、魚介類のほうがさらに健康的であることが示唆されています。

 

「私たちは肉を食べることを完全に諦める必要などありません。2型糖尿病のリスクを減らすためには、赤身肉の摂取を控えめにして、代わりに鶏のむね肉と魚介類を食べればよいのです。あるいは植物性たんぱく質、乳製品も良いでしょう」と主任研究者のコー教授はコメントしています。

 

出典:『米国疫学雑誌

編集者プロフィール

  • 山野秋生(やまの あきお)
  • 薬学博士。専門は栄養学。科学的根拠に基づいた栄養と健康に関する知識の普及および啓発活動に努める。ダイエットアプリ『Mealthy』の理論面のサポートも担当。《ダイエットアプリ》 Mealthy

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