X線(レントゲン)検査などの被ばくが気になる?

2016年10月19日

小児科医 Dr. しろくま子の“みんなも知っていたらいいのにと思うこと”(水曜更新) 第37回

 

「肺炎の可能性も考えてレントゲン写真を撮りましょう」というと、被ばくを心配されることがあります。たぶん、言えなくても気にしてる人も多いのでは。今回は被ばくをどうやって気にするかを考えていきます。

 

ふつうのX線(レントゲン)検査

 

例えば胸部X線(レントゲン)写真では、ふつう正面からと側面からの二枚をとります。このとき浴びる線量は、自然界から一年間に受ける放射線量よりずっと少ないとされます。正面だけにすると見落としが増えて、繰り返し撮ることになるとの報告もあります。だから状態が許せば、子どもでも二枚とることが多いのです。

 

そもそも、放射線を浴びると何が心配なのか

 

 

よく懸念されることは「発がん」と「不妊」です。放射線がこれらを起こす詳しいしくみの説明は他にゆずり、ここでは影響の仕方を見ていきます。

 

発がんは確率的影響、不妊は確定的影響

 

確率的影響というのは、微量でも影響がありうるものです。確定的と呼ばれるものは、ある一定以上を超えると、問題が発生する可能性が100%に近づき、その影響は重くなっていくものです。だから卵巣や精巣への被ばくには神経質になることが多いのだと思います。

 

「ちょっと違いがわからない」という人のために、イメージを沸かせる例え話を。

 

ある女学生シロクマコが評判のいい塾に通うことにした。しかしその塾には前に付き合っていたクマオがいて、同じクラスになりたくなかった。一クラスは20人で、何クラスもあるようだ。クラス分けはくじ引きで行われるらしい。

 

 

このとき、クラス替えの回数が増えたら確率的影響、塾の生徒数が減れば確定的影響につながる、と考えるとわかりやすくないですか?

 

つまり、クラス替えが増えればシロクマコは元カレと同じクラスになってしまう可能性が高くなる。でも、1回目で同じクラスになるかもしれないし、何回クラス替えをしてもならないかもしれない。(確率的)

一方で、塾の生徒が少なければ、同じクラスになる可能性は上がる。20人を切れば、絶対に同じクラスになるし、少ないほど席も近くなって気まずい。(確定的)

 

「じゃあ最初から、その塾に行くなよ」というツッコミが聞こえてきそうですね。これはまさに「検査回避」です。そうすると成績が悪いシロクマコは困るけど、クマオと同じクラスになるとつらくて全く勉強ができない。だからいい塾は諦めて、別の塾を探すことにする。見つかるかな…。

 

放射線の影響を減らす方法 ①検査を受けない ②別の検査を希望する

 

検査を受けないのが最も確実な回避方法であることは言うまでもありません。単純なX線検査ならともかく、CTや透視検査となると被ばく量が上がります。したがって、その検査の必要性について納得しておきましょう。検査の結果でどのように方針が変わるのかを確認してください。知るためだけだったら、回避するという手段があります。特に子どものお腹の被ばくには慎重になって当然です。

 

しかし検査しなくては診断・治療ができず、問題が解決しない場合。それでも放射線検査を避けたいのであれば、次善の案を尋ねてみてはいかがでしょう。超音波検査、MRIその他で、どのくらい目的が達成できるのか。「他の方法はないですよ」と言われるかもしれないけど、聞くのはタダですから。

 

放射線の影響を減らす方法 ③距離をとる

X線を浴びる範囲から遠いほど、影響は少なくなります。6cm以上では鉛の防護板を使った場合とほとんど変わりません。つまり胸のレントゲンをとるなら、ふつうは卵巣や精巣などから十分な距離が保てていることになります。手を怪我してレントゲン写真をとるなら、身体をなるべく離してはどうでしょう。変な格好だけど、お尻を後ろへ。不妊は確定的影響だから、被ばく量は少しでも減らしたいのです。

 

確率的影響から逃げきるのは無理

 

例えばワラビだって発がん性のある物質を含んでいます。安全性を疑問視されている食品添加物などもありますよね。人間がわかっていないこともたくさんあるはずです。そして発がんしたとき、一回の放射線検査やワラビのお浸しが関与したかを知る方法は(少なくとも今のところ)ありません。たとえ作用を及ぼしたとしても、あるステップを踏んだだけで、織物における一本の糸のような感じです。他の要素も複雑に絡み合っていて、それだけのせいにするのは強引です。どうも考えやすいものに責任を帰してしまいがちですが、そこで客観的になれるのが理性ある文明人だと思います。結局のところ、日常生活においてコツコツと努力するしかなさそうです。大量に同じものを食べないようにしたり、あく抜きをしたり…。

 

さて、最後にもう一つ。妊娠している可能性のある女性は、放射線検査を提案されたときに必ず話をしてください。

 

参考文献 

小児科診療 小児の胸部単純X線写真のよみかた

 

プロフィール

Dr.しろくま子

 

20世紀の末に某国公立大学医学部卒業。二児の母。両親は非医師。フルタイム勤務に復活する際、保育所探しに難渋して転居。通勤・夜間労働と子育てに四苦八苦で家が荒れる。三十代前半に配偶者事情で北米へ。帰国後は小児科一般診療や専門外来を担当。好きなものはテディベア、通勤電車での読書。ドイツ語が少し読めるようになってきました!

 

編集:プサラ研究所

 

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