受診に必要なものと心構え〜今さら基本的な話3

2016年09月28日

小児科医 Dr. しろくま子の“みんなも知っていたらいいのにと思うこと”(水曜更新) 第34回

保険証とか診察券とか、そういうものもモチロン必要ですが、他にもいろいろあるのです。今回は診療を行う側からみて、「ほしいもの」を並べさせていただきます!

 

まずはふつうの話。小児科以外でもあったほうがよさそうなもの。

 

①お薬手帳をお忘れなく

 

これはホント参考になります。なぜなら、ある状態のとき、いつでも(誰にでも)同じ薬を処方するわけではないから(もし決まりきっていたら、薬局で買ったほうが手っ取り早いはず!)。オーダーメイドでは、情報がたくさんあったほうが細かい対応ができますよね。

 

薬は飲み合わせだけが問題ではありません。解熱鎮痛薬でも抗生物質でも、使ったことがあるものに関しての情報は、次の処方の役に立ちます。お薬手帳を見ると、薬の種類どころか、量までわかりますしね。それまでにかかった病気も類推できます。

 

最も適した処方を受けるために、ぜひお薬手帳をお持ちください。子どもの場合、母子手帳も役に立ちます。

 

②時間には余裕をもって

 

 

「診察まで、あとどれくらい待てばいいんですか?」と、受付の人がよくつめ寄られていて、気の毒に思っています。だって、あまり正確に答えられることはないから。

 

待ち時間の長さには運不運のようなものがあります。診療の仕組みを工夫すべきではありますが、限界がある気もします。一人の患者さんの症状が重ければ、とたんに診察待ち時間は延びてしまいます。でもそれは避けることも、予測も難しいものです。

 

というわけで、「用事の前に病院へ寄ろう」という受診は避けることをおすすめします。イライラを増すし、本来の目的を失ってしまうことさえあるからです。

 

検査や治療をしようと提案しても、「もう時間がない」と断られることがしばしばあります。「待ち時間が長かったから、時間がなくなった」と言われますが、医療が優先するのは時間よりも身体です。そうでなければ夜間診療などないわけです。

 

「待ち時間の存在」と「時間外診療の存在」をセットで考えていただけると、ちょっとは医療への怒りが収まるのではないでしょうか。ぜひ時間のゆとりを持って受診してください。

 

小児科ならではの注意点いろいろ

 

ここからは小児科ならではの注意点かもしれません。笑い話のつもりではないのですけれど。

 

③経過が分かる人やメモを

 

土曜日などは、よくお父さんが子どもを病院に連れてきてくれます。でも、ただ診察を受ければ、適切な医療が受けられる、とも限りません

 

 

しろくま子:赤ちゃんが咳をしているということですが、いつからですか?

パパ:うーん、ちょっと前からかな。

しろくま子:(それっていつ?)夜は眠れていますか?

パパ:どうだろう。

しろくま子:(いやいや、どうなの?)おっぱいやミルクは飲めていますか?

パパ:どうかなあ。ともかく、かみさんに行けって言われただけだから。

しろくま子:(涙)

 

診察すればその時の状態はわかりますが、これは一点の評価です。病気には時間的な流れがあり、経過という線をとらえる必要があります。診察時によくなっているのか、悪くなってきているのか。夜のほうが症状が強いなど、日内変動があるのかどうか。こうした情報が診断や治療の参考になります。

 

したがって、経過のわかる人、あるいはお手紙・記録などのご用意をお願いします。

 

④現物・画像を持って行きましょう

 

 

赤ちゃんの血便、下痢などの場合には、そのオムツを。目つき・動き・癖が気になるなどという相談であれば、ぜひ動画を。「百聞は一見にしかず」です。

 

何か(おもちゃの部品・錠剤など)あやまって飲み込んだかもしれない場合には、それと同じものを。部品はレントゲン検査をする場合に、一緒に写して参考にすることがあります。錠剤の場合、名前を覚えていても、「何ミリグラムの錠剤ですか?」という質問に答えられる人はまれです。だけど中毒は量が重要です。実物は多くの情報を提供してくれます。

 

⑤原則、保護者同伴です

 

小学生の男の子が、バスを乗り継いで一人で病院へやってきました。

受付の女性:先生、なんかお子さんだけで来てるけど、咳をしてて苦しそう。

しろくま子:ああ、喘息で定期的に来てるキミね。おうちの人は?

男の子:家。30分くらいかかる。

しろくま子:(まいったな)

 

医療機関にもよりますが、中学生以下は保護者を求められることが多いと思います。通いなれている病院、あるいは開業医へ小さな用件で行く場合には、小中学生だけでも受診できるかもしれません。でも、検査が必要などというときに、子どもだけだと困ります。だから、状態が差し迫っていなければ、「保護者同伴で」と言って門前払いされることがあると思います。

 

とはいっても、心配な子を放りだすことはできません。

しろくま子:(胸の音を聴診して)これは喘息発作だね。吸入しよう。

男の子:わかった。

 

さっそく気管支拡張薬を吸ってもらいました。少し楽になったようだけど、少年は酸素吸入の必要な状態でした。

しろくま子:これは、おうちに帰れないね…。

男の子:わかった。

 

少年はおもむろに廊下に出て、携帯電話で自宅に連絡しました。

男の子:あ、お母さん、オレオレ。オレ入院。

 

 

なんと、オレオレ詐欺ならぬ、オレオレ入院です。驚きました。でも、診察室で配偶者に電話しちゃう大人も多いのに、廊下に出た少年は気遣いの人なのかもしれません。

具合の悪そうな子には、必ず保護者の付き添いをお願いします。

 

⑥もちろん本人も

 

お薬希望、検査結果確認など、いろいろな理由で保護者の方だけが来院されることがあります。でも、原則として診療には本人が必要です。中には順番取り?もあるようで、呼んだら本人はまだ家や保育園だと言われることも。周りの方はよく見ています。不公平や、不必要なやりとりで待ち時間がのびることに敏感な方も増えています。どうか気配りをよろしくお願いいたします。

 

その他、オムツ、着替え、お金もお忘れなく。特に吐いたり下痢したり、というときは、服を汚すことがよくあります。自治体の補助などで医療費が無料だとしても、ひょんなことで買い物が必要になります。慌てていても、ぜひお財布は持ってきてください。

 

 

プロフィール

Dr.しろくま子

 

20世紀の末に某国公立大学医学部卒業。二児の母。両親は非医師。三十代後半からは月に何度も当直を行う体力がなく、研修医を教えたり専門外来やセレブ的小児科外来担当したりしています。好きなものはテディベア。今はドイツ語が読めるようになりたい。二年半ほど北米に住んでいました。

 

編集:プサラ研究所

 

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