医師の子育て失敗談:赤ちゃんのお世話・育児に悩める方へ

2016年08月10日

小児科医 Dr. しろくま子の“みんなも知っていたらいいのにと思うこと”(水曜更新) 第28回


「小児科医は育児が得意だろう」と思っていたのですが、実際に親になったら自分にがっかりしてばかり。でも他にも仲間は多かったことがわかり、安心しました。実は多くの人が似たような悩みや失敗を通過しているのかもしれません。いかがですか。

 

【1】知識があるせいで、悪いほうに考える

 


生後2週間くらいの子どもが大量に吐いて、病気を心配したがゲップ不足だった

授乳してすぐでした。吐いたミルクが畳一枚分くらい飛んだので、本当にびっくりしました!そして吐いた後が元気。この勢いある嘔吐と、吐いた後のさわやかな様子は幽門狭窄症(ゆうもんきょうさくしょう:胃の出口である「幽門」が狭くなり、胃から腸へ内容物が通りづらくなる病気)の初期症状ではないかと思い、さっそく元上司に相談。

私は泣きそうだったのですが、子育て経験のある彼女は笑ったのです。
「ハハハ、落ち着け、しろくま子」と。
「たとえ幽門狭窄症だったとしても、1回の嘔吐で脱水などになったりはしない。それよりも、やることはやったか?ゲップは出たか?」

 

 

まさに自分が外来で保護者に確認するような内容を問われました。
「い、いえ。」

特に第一子だと、予想外のことが起きたとき、うまく思考が回らなくて間違った方向に考えてしまいがちのようです。これは診療をしていて多くの保護者の方たちを見ていても感じます。

もはや恥ずかしくて相談したことが申し訳なくてたまらなかったのですが、元上司は朗らかでした。
「まあ、いい。しっかり経過を見よ。自分も授乳直後にオムツ替えをしているときに、子どもに吐かれたことがある。とても焦ったが、医者でない夫に、『飲んですぐにお腹が圧迫されたからだろ』とズバリ指摘されたのだよ。フフ、我々もそんなものだ」と。

 


私は温かい態度と具体的な助言に救われました。確かに疲れていてゲップ出しがおろそかに。その後は気をつけたら嘔吐が止まりました。

 

育児ノイローゼ?


もちろん誰もが優しい態度で的確な意見をくれるとは限らないので、身近に話しやすい相手を持てないこともあるでしょう。孤立も苦しいけど、叱咤(や自慢)されるのも疲れます。ただでさえ赤ちゃんには意思が通じなくて、たびたび徒労感に襲われているのです。周囲にも理解してもらえないと、うんざりしますよね。そうなると独りで頑張ろうと悩み、視野が狭くなってしまいがちです。

 


しかし私が思うには、自分がマンツーマンで子育てしたことがある人は、その時間が長いほど、「予想外の展開に驚き、最善の態度をとれなかった気がする」という経験を持つはずです。
したがって、立派な育児相談を行っていらっしゃる先生も、苦い思い出をお持ちか、あるいは実のところ家庭では配偶者に任せきりだったか、どちらかのように感じられてならないのですが。完全無欠な親はいないし、たぶん定義できない。

子育てが楽だった人は自力で乗り切ってない。

そう考えると、少し肩が軽くなりませんか?

さて、医師の慌て話は他にもあります。母親だけなく、父親だって心配性になるようです。子どもが頭痛を訴えたのでさっそく画像の検査をして何でもなかったという逸話も聞きました。

 


親になると医師らしい冷静さを失い、親としての感情に動かされる人が多数派かもしれません。だから悩んだら小児科で相談してください。子育て経験のある小児科医なら、きっと理解します。

 

【2】知識があるせいで、あなどってしまう


今度は逆の話です。知識に基づいて過剰に安心しないように。

例1 まだ寝返りできない月齢だから柵のないベッドに置いた。だが大泣きしてずり落ちてヒヤリとした。

発達を考えると生後3か月未満には柵が不要に感じられますが、バタバタして横に落ちてしまうことがあるのです。柵のない場所(オムツ替えベッド、診察台)に置くときには、必ず頭を壁側にして赤ちゃんを寝かせましょう。そうすれば、泣いて暴れても脇へずれていき、落ちにくいはずです。ぜひ習慣づけてください。

 


例2 保育園に通っていれば鼻水なんか当たり前、とのんびり構えていて中耳炎に
とにかく働く親は忙しい。風邪を繰り返してもすぐ治るのであれば、免疫機能に問題はない。だから大丈夫?

しかし耳の奥に水がたまるタイプの中耳炎は、発熱も耳痛もなくひっそり進行し、聴力に影響することがあります。鼻水が2週間続いていたら、耳鼻科で鼓膜を診てもらいましょう。


さて、失敗談、いかがでしたでしょうか。子どもの体や病気に詳しいはずの人でも、毎日のお世話が万全にできるわけでないようです。だから高学歴の人が子育てに四苦八苦しても全然おかしくありません。みなさん遠慮なさっていますが、お困りでしたらご相談を。どうやら「慌てない、あなどらない、思い込みすぎない」とよさそうではあります。わかっていても難しいのですけれど。
 

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