茶人に聞く・中国茶芸の癒しの力

2016年06月24日

元気のヒント・松浦優子の台湾暮らし(金曜更新) 第32回

台湾烏龍茶と共に発展した「中国茶道」。一体どんなもの?日本の茶道とはどう違う?有名な中国茶道家・岩咲ナオコ先生に一から教えてもらいました。生活の中から生まれた中国茶芸は、人の心を癒す力を持っています。
 

茶人に会いに行くことにした


台湾にはたくさんの「茶芸館」があります。日本とは違う様々な茶器がずらりと並びますが、一回目は店員さんが教えながら淹れてくれるところも多く、初心者でも安心です。

私は台湾の友人たちから淹れ方を教えてもらい、中国茶器の基本的なものを数種類買って自宅で飲んでいます。

 


台湾の茶芸館は、一杯目以外は自分たちでお茶を淹れてのんびり過ごす場所です。
じゃあ「中国茶芸」って何だろう?
ということで、知識ゼロの状態で、知人でもある素敵な中国茶道家を訪ねました。
中国茶教室&サロン「茶禅草堂」代表・岩咲ナオコ先生です。

 


日本人として初めて中国の国家認定高級茶芸技師の資格を取得するなど、中国茶道家として有名な岩咲先生ですが、日本の煎茶道にも造詣が深い方です。

お茶のプロフェッショナルに、いろいろ聞いちゃいましょう。

 

中国茶芸は生活の中から生まれ、茶芸師はその一杯にかける


「茶禅草堂」は、駅からほど近いマンションの一室にありました。棚にはたくさんの茶器が並び、落ち着いた色調のサロンには静謐な空気が満ちていました。

私を招き入れつつ、さりげなくお香に火をつける岩咲先生。
なんとエレガントな…!

 


実は、前回連載の「中国茶=漢方薬」という話は岩咲先生に教えてもらったもの。中国茶芸資格の教科書まで執筆している方なので、とにかくお話が楽しくて面白くて、気づけばなんと4時間。
ここにご紹介するのはそのエッセンスです。

日本の茶道は、無駄を極限まで洗練することで完成した「型」を大事にします。お茶を飲むという行為がひとつの文化体系にまで昇華された、一種の哲学です。

一方、中国茶芸は生活の中から生まれたもので、その中心はあくまでも「どうやってお茶をおいしく飲むか」です。
そのため、茶芸師には、茶葉・水・茶器などお茶そのものやその周辺の豊富な知識、そして、お茶をおいしく淹れる技術が求められます。
基本的な作法はありますが、日本茶道のような厳密な「型」はありません。とてもおおらかです。

岩咲先生が開催する茶会も毎回コンセプトが違っていて、それに合わせたしつらいや、芸術家とのコラボレーションもあり。
もちろん、茶会に合わせて厳選されたお茶が、最も適した茶器によって、最高の技術で供されます。

 

▲篠笛奏者の佐藤和哉氏とコラボした、茶禅草堂の春慶茶会

 


岩咲先生:「茶道では、お道具やお軸についての話はするけど、お茶の種類や産地、その味について語ることは少ないでしょう?」
…確かに!!!

お茶をいただくまでの一連の「行為」すべてが美学になっている日本の茶道。
それに対し、中国茶道は、最終目的はあくまでも
「おいしいお茶」
なんですよ。

私:「つまり、茶芸師というのは、中国茶の超凄腕バリスタってことですね!?」
そう言ったら岩咲先生、大爆笑していました。
でも、そういうことじゃないかな。

膨大な種類の茶葉に精通し、適切な方法を見極め、心地よい空間の中でお客様にお茶を淹れる。
日本茶道は文化であり哲学。
そして中国茶道(茶芸)は…茶芸師が毎回作り出す芸術作品のような気がします。

 


▲春慶茶会のしつらい。人・自然・時間が紡ぐ調和空間を目指す

 

香りは心を動かし、人を原点に帰す


取材前、「どんなお茶をご用意しましょうか?」と聞かれました。
「えええっ、お茶淹れていただけるんですか?!」
「そりゃあ、お茶の取材なんですから(笑)」
という訳で、岩咲先生手ずから淹れた中国茶をごちそうになってしまいました。
なんという贅沢な茶飲み話だ。

 


私がリクエストの筆頭に挙げたのはやはり、台湾烏龍茶の元祖・凍頂烏龍茶でした。私が初めて飲んだ台湾のお茶です。

まず金色の美しい色に驚き、そしてその華やかで甘い香りに、当時の私は大げさでなく「打ちのめされた」のでした。

 


▲茶菓子までいただいてしまった

 


出していただいた凍頂烏龍茶は、あの時に飲んだお茶によく似ていました。
茶杯から立ち上がってくる香気が体を駆け抜け、私は一気にあの思い出の時と場所に引き戻されました。

台湾烏龍茶の最大の魅力はその香りにあると思います。
青茶の香りは一瞬で人の心を動かし、体の中いっぱいに「快(心地よさ)」を生み出してくれます。
いっぱいに香りを吸い込むと、それは深呼吸になります。
心地よい香りに包まれ、「ほっ」と息をつくと、人の心は自然に開きます。
現実世界からひととき離れ、原点に戻る時間。

岩咲先生が茶席を通じてお客様に供したいものは
「心を開く時間」
だと言っていました。

お茶の味や香り、そして目で見て楽しむ茶器やしつらい、音楽など、五感全てでその世界を楽しみ、羽を休める場所になること。
それが、お茶の持っている癒し効果です。

台湾烏龍茶の力を借りて、ほっとするひとときを作りませんか?
次回は、台湾烏龍茶を気軽に楽しむための基本情報をお届けします。

【岩咲ナオコさん】
茶禅草堂中国茶教室&サロン主催
中国茶文化協会理事
各地で中国茶講師として活躍
<資格>
中国政府認定国家資格 高級茶藝技師/中国政府認定国家資格 中国高級評茶員/
中国茶インストラクター・コーディネーター
●茶禅草堂:http://cha-zen.com/


プロフィール

 

松浦優子

 


東京都出身。Web広告ディレクターとして勤務後、ひょんな縁で台湾・台北に語学留学し、すっかり台湾に魅了される。帰国後に日本語教師資格を取得し、現在は外国人向け日本語レッスンや台湾現地ニュースの日本語翻訳などを手掛ける。その後も台湾には年数回のペースで訪れ、一年のうち約1か月は台湾に滞在。現地の友達との旧交を温めつつ、もっと深く台湾を知るべく取材活動を行っている。

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