世界で台湾だけに生息、先住民が見つけたスーパーキノコ

2016年05月27日

元気のヒント・松浦優子の台湾暮らし(金曜更新) 第28回


歴史ある漢方の世界で、近年薬効が認められた台湾固有のキノコ「牛樟芝(ぎゅうしょうし)」。そのパワーは霊芝(れいし)にも勝るとされ、高い注目を集めています。その発見の裏には、台湾先住民の文化がありました。

 

台湾の漢方薬材、9割は輸入品


この連載では台湾での生活を通じて漢方の話題をお届けしていますが、そもそも漢方の理論は中国大陸で成立したものです。17世紀~19世紀、中国南部から漢族系移民が大量に台湾へ流入し、それとともに漢方を含む中華文化も台湾に伝わりました。

現在では、台湾人の約66%が漢方薬を常用しています(※1)。一般的に使われる漢方薬材は約150種類といわれますが、それらの原料は9割以上が主に中国からの輸入に頼っています。

※1:行政院衛生署中醫藥委員會・2009年データ

 

中華文化とはまったく異なる文化を持つ台湾先住民


漢族系移民が来る前から、台湾には先住民が住んでいました。現在政府に認定されているのは16民族で、全人口に占める割合は2.3%、約55万人です(2016年3月末現在)。日本でも活動していたタレントのビビアン・スー(徐若瑄)も、漢民族とアタヤル(タイヤル)族のハーフです。

 


▲中央研究院・民俗学研究所の台湾先住民文化展示コーナー


また、漢族が台湾に移民した頃、台湾海峡を渡る道のりはとても過酷でした。そのため、台湾に辿り着けたのは男性が圧倒的に多く、当時から平地先住民(平埔族:へいほぞく)の女性との結婚・混血が進んでいて、多くの台湾人には先住民の血が流れているとも言われます。

台湾先住民はマレー=ポリネシア系。多様な文化や言語を持っており、いわゆる「中華文化」とはまったく違う世界に生きてきた人たちです。(今では仕事などで都会に暮らしている先住民もたくさんいます。)

流入してきた漢族は平地に住み、先住民の人たちの生活地域は山の中でした。自然豊かな台湾の森の奥深くで先住民が見つけたのが、非常に高い薬効を持つといわれる「牛樟芝(ニョウジャンジー:ぎゅうしょうし)」です。

 

霊芝を超えるスーパーキノコ、牛樟芝(ぎゅうしょうし)


先住民の文化では、日常生活から重要な儀式まで、さまざまな場面でお酒が登場します。そのため、肝臓を患う人が多かったそう。そして、肝臓病や疲労回復などの薬として、「牛樟樹」というクスの木だけに生えるキノコが伝統的に珍重されてきました。

海抜450~2000mの地域に生える牛樟樹のうち、樹齢100年以上の老木に生える赤褐色のキノコが「牛樟芝(ニョウジャンジー:ぎゅうしょうし)」です。真菌の一種で、光を嫌う・多湿を好むなど、生育の条件は非常に限られており、成長も遅いそうです。
このキノコ、世界でも台湾だけ、しかも台湾の一部の高山地域にしか生えないのです。

 


▲牛樟芝(立康中薬産業文化館内の案内幕より)


牛樟樹の木は昔から香木として珍重されていましたが、牛樟芝(ぎゅうしょうし)が注目され始めたのは比較的最近のこと。1990年に初めて台湾の医師が論文を発表し、1997年に命名。その後急速に研究が進んでいます。その薬効が注目された結果、牛樟樹の乱伐がさらに進んでしまいました。

台湾の政府は2002年に牛樟樹を天然記念物に指定して、保護を進めています。また、非常に難しかった人工栽培技術も徐々に確立され、少しずつ市場に出回る量が増えてきました。

 

中国の漢方界に「逆輸入」された牛樟芝


牛樟芝(ぎゅうしょうし)は現在、「台湾の国宝・森のルビー」と呼ばれ、霊芝(れいし)を超える薬効を持つ台湾固有の漢方薬材として高い人気を誇っています。免疫力向上をはじめ、さまざまな効果があると業界団体はうたっています。トリテルペノイドという物質は、霊芝:20~50種、牛樟芝:約200種と牛樟芝のほうが種類が多く、その含有量も霊芝:1~3%、牛樟芝:10~45%と高いそう。

そして昨年(2015年)9月、中国政府機関の輸入漢方薬材リストに牛樟芝が正式に登録されました。中国発祥の漢方の世界に、台湾からの「逆輸入」が起きたのは非常に珍しいことです。

 


▲人工栽培の牛樟芝製品販売企業サイト


実は、台南の漢方工場を見学させてもらった時、この牛樟芝の人工栽培設備も一瞬だけ見せてもらいました。本当に貴重なものだとのことで、写真撮影はできず。

光や乾燥を嫌う牛樟芝の栽培ボックスは密閉され、遮光布で覆われています。布を一瞬だけ外してもらうと、一ヶ所だけ設けられていた小さなガラス窓の内側が、冬のお風呂場の窓のように結露していました。

くもったガラスの向こうには、茶色の牛樟樹の大きな塊があり、その上に鮮やかなオレンジ色のスライムのようなものがくっついていました。それが牛樟芝の「赤ちゃん」。

後日、台北のある健康食品店で牛樟芝パウダーをちょっとだけ試食させてもらいました。どのような加工をしたのかはわかりませんが、小麦粉のような真っ白の粉末でした。なめてみると、うん。ただただ苦い。おいしくない。

資料として買って帰ろうかなとも思ったのですが、値段を見て一瞬で諦めました。人工栽培のおかげで安くなったとは聞いたのですが、私にはとても手が出る価格ではありませんでした。先住民の人たちは、昔は山で自由に採取していたんだろうなあ。

台湾固有のスーパーキノコ、牛樟芝。その発見の裏には、漢方とは関係ない先住民の文化があったのですね。


プロフィール


松浦優子


東京都出身。Web広告ディレクターとして勤務後、ひょんな縁で台湾・台北に語学留学し、すっかり台湾に魅了される。帰国後に日本語教師資格を取得し、現在は外国人向け日本語レッスンや台湾現地ニュースの日本語翻訳などを手掛ける。その後も台湾には年数回のペースで訪れ、一年のうち約1か月は台湾に滞在。現地の友達との旧交を温めつつ、もっと深く台湾を知るべく取材活動を行っている。

コメント

    ゲスト

    2016年05月30日 21時53分

    ゲスト

    スーパーキノコの存在も確かに気にはなりますが、私、何故か台湾先住民にも興味がわきました。そういえば国内での覇権争いに敗れた蒋介石が逃げたところが台湾、先住民がいて不思議はないと言えば確かにその通り。で、今先住民はどうなったんでしょうか?

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