水はぬるめの燗がいい? 台湾人の水の飲み方

2016年03月18日

元気のヒント・松浦優子の台湾暮らし(金曜更新) 第19回

1463486807


風邪をひいたと言うと、台湾の人が異口同音に言うのは「水を飲め!」という言葉。水は体内の「気血水」のスムーズな循環に欠かせない重要なものです。そして、冷たい水ではなく、ぬるま湯がベストだとされています。

何故にキミたちはそんなに水を飲ませたがるのだ


SNSのタイムラインや個別のメッセージで、「風邪ひいちゃったんだよね」と台湾(や中国)の友達に表明すると、合言葉のように返ってくる返事がこれです。

「多喝水!」(水をたくさん飲みな!)

本当に、誰に聞いても同じ台詞が返ってきます。とにかく、水を飲め、水を飲め、水をたくさん飲め・・・・・・。あったかくしてねとか、薬を飲んでねとか、栄養を摂ってねとか、たっぷり寝てねとか、他にも色々アイデアがあると思うんですが。
日本でも、熱が出た時はたくさん水分を摂るのが大事だと言われますが、台湾の友人たちの場合、風邪の症状に関係なく、開口一番・異口同音に言うのです。「水を飲め」と。・・・何故にキミたちはそんなに私に水を飲ませようとするのか。

で、仲の良い子に「他に何か言いようはないのか?」と問いただしてみました。そしてわかったこと。これもまた、漢方の考え方がベースにあるんです。

体を循環する「気・血・水」(き・けつ・すい)


漢方の考え方では、体の中を循環するものは3つあります。
一つは「気」。生命活動の源になるエネルギーです。もう一つは「血」。そして「水」は、血以外の体液で、リンパ液や汗、尿、涙などを指します。これらがスムーズに体をめぐり続けているのが健康な状態とされます。

1463486807

「気」は目に見えませんが、「血」と「水」は液体として体内に存在します。具合が悪いときというのは「血」は、足りなくなったり(血虚:けっきょ)、ドロドロになったり(瘀血:おけつ)しています。それから「水(体液)」も水分不足だと循環しにくくなります。血そのものが足りない場合は「補血」できるものを食べなければなりませんが、まずは水分を補給することでドロドロ血や体液不足を改善し、循環を良くするのが効果的だと考えられています。水を飲むというのは、この観点からとても重要なのですね。

「水ください」でも「お湯ください」でもなく


台湾の友達と日本で会った時によく愚痴られるのは、「日本の外食店の水ってほとんど氷が入ってる・・・」ということ。いやいや、きーんと冷えた水だから美味しいんでしょうが。と言いたいのですが、中華文化圏の人たちは、総じて冷たい飲食物を嫌います。プラスチックのボトルに入れた常温の水をいつも持ち歩いている印象もありますよね。

さて、ある日台北のある食堂で、友人が食後に「薬飲まなきゃ」と言い出しました。台湾のレストランでは一部の高級店を除いてお冷やは出てきません。そうか、じゃあ水もらう?と言おうとした時、友人はこう店員さんに告げました。

「温水(ぬるま湯)ください!」

水じゃなく、お湯でもなく、ピンポイントで「ぬるま湯」かい?! と驚く私。そもそも、ぬるま湯って何度くらいなのだ。お湯を頼んでちょっと冷めるまで待つんじゃダメなのか。わがままな注文だって嫌がられない・・・?
とドキドキしていましたが、まったくの杞憂でした。店員さんは「はいよ」と、あっさりぬるま湯を持ってきてくれたのでした。
「ぬるま湯」という注文は面倒くさいはずなんです。台湾では水道水は一度沸かさないと飲めないので、沸かしたお湯に湯冷ましを入れて「温水」を作らないといけませんから。なのに何だろうこの阿吽の呼吸。

漢方における水分補給の原則は「飲必熱飲」。飲む場合には必ずあたたかいものを、という意味です。中でも、「温水(ぬるま湯)」が一番良いとされています。その常識が共有されている社会なので、「水を“ぬる燗”で」という注文が当たり前にできる訳です。

西洋医学とはまったく異なる「脾」の役割


まあ、風邪の時にお腹は冷やさない方がいいとは私も思いますが、台湾での「冷たい物タブー」はかなりしっかり根づいていると感じます。どうしてなんだろう?
疑問に思っていた時、ある人が教えてくれました。
「冷たい物を飲むと、内臓が冷えて消化や代謝の機能が落ちてしまう。冷たい物は食道から胃に入る。そして、胃の下にある“脾”を冷やしてしまうからいけないんだよ」

漢方における「脾」は、消化吸収を行うだけではなく、体に必要な栄養(漢方では「水穀の精緻」という)を全身に行きわたらせる役割があるとされています。そして、「水穀の精緻」は肺の「清気」と結びついて「気」になります。
「だからね、“脾”はすごく大事。冷やしちゃダメ」。・・・なるほど。

実はこの時、陰陽五行説に基づいた各内臓の役割と相克(相互の影響関係)についてすごい勢いで説明してもらったのですが、複雑なので今回は割愛します。簡単な画像だけ載せておきます。

1463486807

この話を聞いて、私も家ではなんとなく冷たい飲み物をやめておくようになりました。外食のお冷やに氷が入っていると「ああ、脾が冷えちゃう・・・やだなあ」と思ったりして。

もちろん、漢方ではとにかく水を飲めばいいということではありません。「不渴不飲」、つまり喉が渇いたと思った時に飲めば良いのです。また、一度に大量に水を飲むのも、胃液を薄めてしまうため良くありません。ぬるま湯を少しずつ、何回にも分けて飲むのがおすすめです。台湾の大手新聞(※1)では、ぬるま湯を一日に計3200cc飲み続けた体重115kgの男性が、6週間で21kgのダイエットに成功したなんて記事もあります。もちろん食事にも気をつけ、運動も並行していたとのことですが、温水が代謝を上げることの効果は明らかだ、とその記事は伝えています。

台湾では「風邪=水を飲む」が定着しすぎているきらいもあって、ネットで調べると逆に「水の飲み過ぎに注意」という警告がたくさん出てきます。

水を飲み過ぎると、余計な水分が体にたまり、体調が悪化してしまいます。このような状態を、台湾の人は「体に湿気が溜まった」とよく言います。これは、水の飲み過ぎや、湿度の高い梅雨の季節などに起こりやすい体調不良で、「飲邪」や「水毒」などと呼ばれるそうです。
体の湿気を取る方法も色々ありますので、また別の機会にご紹介しましょう。


※2015年12月11日・聯合報記事「喝溫水 他瘦21公斤」

プロフィール

1463486807

松浦優子
東京都出身。Web広告ディレクターとして勤務後、ひょんな縁で台湾・台北に語学留学し、すっかり台湾に魅了される。帰国後に日本語教師資格を取得し、現在は外国人向け日本語レッスンや台湾現地ニュースの日本語翻訳などを手掛ける。その後も台湾には年数回のペースで訪れ、一年のうち約1か月は台湾に滞在。現地の友達との旧交を温めつつ、もっと深く台湾を知るべく取材活動を行っている。

コメント

この記事へのコメントはありません。

この記事の関連ワード

新着の記事

Sidekibit b fefa1c4699a4986147a527399409cd3c5417e373a7c81d98947fd955971daf54

人工知能KIBITが、あなたに合った記事をおすすめします。 初めてKIBITに教えた時は翌朝までお待ちください。