イタリア人の血液にはワインが流れている

2016年02月11日

スローフード・スローライフの地イタリア*シエナより愛をこめて 第15回

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「ワインは心臓病の予防になる」というフレンチパラドックスがアメリカのメディアで1991年に放映されてから、ワインへの関心がグッと高まった。長いワインの歴史を持つイタリアで、ワインは庶民の健康とどのように関わってきたのだろうか?

紀元前から存在する美味しい良薬


紀元前からトスカーナに住むエトルリア人は、ワインと薬草、キャベツを混ぜ合わせ、腫れた箇所に膏薬のように使用していたほか、膿瘍、赤痢などの治療にもワインを用いていた。

古代ローマ時代には、甘いワインで浸したパンを1歳半の乳飲み子にあてがい、乳離れをさせた、とある。

ルネッサンスの時代、フィレンツェの川は毛織物産業で汚染されていたため、消毒の意味を込め、水にワインを混ぜて飲んでいた。サンタ・マリーア・デル・フィオーレ大聖堂のクーポラを建設していた当時、作業中に落下しないよう、ワインを入れすぎないように、と、大工に注意がされていたらしい。

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それぞれの家庭に、ワインの効能のレシピあり


今日では、ネットを通じて世界の人たちが情報を共有し、似通った知識を持つようになってきたが、 ネットと縁のない生活を営むイタリア人には、独自の世界観が宿っていて面白い。
    
シエナ庶民の憩いのバールで、バリスタに質問を投げかけた。

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「ねえ、一昔前まで、子供が自転車で転んで皮膚が擦りむけたら、ワインに砂糖を混ぜた液体で皮膚をくっつけていた、って聞いたけど、それって本当?」

すると、狙い通り、今まで、新聞を読んでいた年金生活のお爺さんたちが、一斉に反応した。

「そんな話、聞いたことない」
「でも、消毒としてワインを使っていたのは確かだ。砂糖はいれんが」

「ねえ、もう一つ聞いて言いかしら? 滋養強壮のため、ワインに卵を入れて飲んだりする?  新婚旅行の初夜には、マルサラ酒に卵を入れて、一晩中頑張る、って話を聞いたんだけど?」

すると、お爺さんたちは、
「わしゃ~、スタミナをつける時はステーキを食らう!」
「俺は、朝の4時頃、マルサラ酒に卵黄を入れて飲む。調子が出る」と答え、コップ一杯の白ワインを一気に飲みほした。
バールのカウンターにいる若い女性は、「え~、卵黄を入れるんですか?」と驚いている。

一人の発言に同調することなく、それぞれの意見が飛び交う賑わいが、いかにもイタリアらしい。

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世界のグローバル化とイタリア独自のワイン文化

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食卓の伴侶として、祭りの気付け薬として、イタリア人の日常と共にあるワイン。
イタリア人の体は、アルコールを分解できる仕組みになっているので、相当無茶な量でない限り、ワインに呑まれることはない。

近年では、世界に並び飲酒運転の規制が厳しくなり、加えて、予防医学の情報が流布し、
ワイン=アルコール=悪、というイメージがワイン離れを促進させている。

ワイン大国イタリアに於いて、ワインは文化。
世界がグローバル化される中、ワインにはこれからもイタリア人の血となり、日常生活を美味しく潤してもらいたい、と願う今日このごろです。

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プロフィール

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大多和聖美(おおたわきよみ)
トスカーナ州・シエナ在住。ソムリエ。ワインショップ、小麦粉アレルギー対応レストランでのコック体験を経て独立。「エノテカトスカーナ」を立ち上げ、日本にワインやオリーブオイルの販売を行う。

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