インフルエンザ、プリン体…巷にあふれる乳酸菌製品は本当に“効く”のか

2016年02月04日

はぐれ薬学院生(♀)の “しみる” ひととき 第9回

 近年、コンビニやスーパーで一気に品数が増えた「乳酸菌製品」。以前はヨーグルトに入っているものというイメージでしたが、腸内フローラと健康との関連が注目されてからは、乳酸菌飲料や特別な機能を打ち出すヨーグルトなどが次々と発売されています。手軽に摂れる健康食品として人気の乳酸菌製品ですが、本当に効果はあるのでしょうか?

 

普通のヨーグルトでは乳酸菌が腸まで届かない!“腸まで届く”のは「植物性乳酸菌」

 

 

乳酸菌は、ヒトの腸内にすみつくことができる細菌(善玉菌)の仲間で、発酵食品によく含まれています。便秘や下痢、腸炎など消化器系の症状には医薬品として古くから利用されていますが、最近ではLDLコレステロールを低下させる、2型糖尿病患者の血糖値を低下させるといった報告もあり、より幅広い応用が注目されています。
ひとくちに乳酸菌といっても様々な種類がありますが、大まかには生育環境の違いで「動物性」と「植物性」にわけることができます。

動物性乳酸菌は、ヨーグルトやチーズなどの乳製品に含まれる乳酸菌で、糖分が沢山ある栄養豊富な環境で育つ細菌です。糖分が少ない環境や酸性の環境、塩分濃度の高い環境では死んでしまいます(おぼっちゃまですね)。
ヒトがそのまま口にしても、胃酸でいっぱいの厳しい環境の中では、おぼっちゃまの動物性乳酸菌は生きていけません。一時期、「ヨーグルトを食べても乳酸菌は腸には届かない」と言われていましたが、それはこのような理由があったからです。

植物性乳酸菌は、漬物やみそ、醤油などに含まれる細菌です。含まれている食品から想像がつくように、塩分濃度の高い環境でも生きていくことができます。また、酸性度の高い環境にも耐える乳酸菌もいるため、これを添加することで“腸まで届く”と謳うヨーグルトが売られるようになりました。

ちなみに、おぼっちゃまの動物性乳酸菌も、ただ死ぬだけではなく、植物性乳酸菌のエサとなってくれます。両方の乳酸菌をバランスよく摂ることで、腸内環境を良い状態にすることができるのです。“腸に届く”ヨーグルトは、その意味で理にかなった組み合わせと言えるかもしれません。

 

 

インフルエンザ、プリン体…特別な乳酸菌を使った製品、本当に効く?
消費者がチェックしておきたい3つのポイント

 

 

最近では特定の疾患をターゲットにした乳酸菌製品が売られています(ほとんどが植物性乳酸菌です)。
ある製品は、特定の乳酸菌が免疫に重要なナチュラルキラー細胞を活性化させることで、風邪やインフルエンザの罹患リスクを下げることを発表しています。また別の製品は、食品に含まれるプリン体をエサに増殖する乳酸菌株を見つけ、これを配合しています。
いずれの場合も、メーカーとしては、薬機法(旧薬事法)*に抵触するため、「効く」とは広告していません。ですが、CMや店頭での表現を見ると、いかにも効きそう…という感じがしますね。実際のところはどうなのでしょうか?

これをチェックするには、まずメーカーの製品サイトやプレスリリースを見てみます。
積極的に情報開示を行っている場合はヒトでの試験(臨床試験)結果を掲載していることもありますが、実はマウスやラットのような動物レベルでしか効果を確認できていない、という製品も結構あるのです。

また、ヒトでの試験を行っているから必ずしも良いというわけでもありません。動物と違ってヒトは個人差が大きいため、何か良い結果が出ても、食品の効果なのか、それ以外に影響している要素があるのか、きちんと見分けなくてはいけません。食品を食べた人とそうでない人で単純に結果を比べるのは、ちょっと危険です。

一般に、ヒトの個体差によるばらつきを減らし、誤った判断をしないために取られる臨床試験の手法として、「ランダム化(無作為化)」と「盲検化」があります。これが行われている試験は信頼性が高いと考えてよいでしょう。

「ランダム化(無作為化)」
は、製品を食べるグループとそうでないグループで、年齢や性別、健康状態などに差が出ないように、振り分けのルールを作って機械的にグループの割り当てを行うことです。

「盲検化(もうけんか)」
は、自分が食べるのが製品なのか、それともプラセボ(有効成分は入っていないが、見た目や味などは製品と同様で判別ができないもの)なのか、本人にはわからないようにすることです。

実際にはもっと多様な手法がありますが、この2つが行われているかを気にするだけでも、製品が効くのかどうかを十分判断することができます。
ちなみに、機能性表示食品であれば、必ずランダム化された臨床試験が行われているので、ある程度は有効性が保証されていると考えることができます。

乳酸菌製品を焦って買い占める前に、一度検索してみるのも良いかもしれません。

 

 

食生活のバランスがしっかりしていれば、乳酸菌は強い味方になる

 

 

本当に効く製品を見分けるポイントをお伝えしましたが、何も摂らないよりは乳酸菌製品を摂る方が、身体には良いと思います。消化器症状などに対する乳酸菌の有効性を実証する報告は数多く出されていますし、今のところ、副作用もほとんどないことがわかっています(牛乳アレルギーの方、妊娠中の方は念のため注意してください)。

仮に効果に疑問がつくとしても、おまじない程度に気楽に使う分には、積極的に使っても良いのではないでしょうか? 人の信じる力は、本当に馬鹿にならないものです。
あるストレス性疾患の治療薬の治験で、プラセボ(治療薬と見た目は同じだが、薬効成分は入っていないニセの薬)を投与した群でも20%の患者さんに症状の改善が見られたという報告があります。まさに、気持ちが病に効いたという例です。

他の食品でも同じことが言えますが、一番大切なのは食事全体のバランスです。
極端に乳酸菌製品ばかり食べるのではなく、家計に負担がかからない程度で、いつもの食事にプラスする分には、とても良いアイテムだと思います。
ぜひ、うまく活用してください。

 

*薬機法…医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律

 

 

<出典・参考文献>
1. Medline Plus “Lactobacillus”(Last reviewed: 02/15/2015)
2. 国立健康・栄養研究所【「健康食品」の素材情報データベース】「乳酸菌、ビフィズス菌など
3. 『プロバイオティクスとプレバイオティクス : 21世紀の食と健康を考える』ネスレ科学振興会 監修/和田昭允, 池原森男, 矢野俊正 編 (学会センター関西)

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