カフェ(コーヒー)とバールとイタリア人

2016年01月28日

スローフード・スローライフの地イタリア*シエナより愛をこめて 第13回

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イタリアにはカフェ(コーヒー)を提供するバールがたくさんあるが、マニュアル化された接客サービスもなく、そのあり方は多種多様。コクのある味わいで憩いのひと時を与えてくれるほか、地域社会の維持にも関わり、私たちの健康にも一役買ってくれている。

カフェ(コーヒー)の好みは十人十色


少々の時間の遅れを気にしないイタリア人だが、カップに注がれるカフェの量を巡っては、バリスタ(バールの給仕)に寸分違わぬ正確さを求める。

「おいおい、カフェ バッソ(低い)と言ったじゃないか。これじゃ普通のカフェだ!」

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低いカフェとは、カップに注がれたカフェの位置が2~3ミリほど低い状態のこと。
短い抽出時間では、豆に含まれる多くの特質を抽出しきれず、カフェインも少ない。
使用される水が少ない分、濃厚な味になるのかと思いきや、水対カフェの割合は普通のカフェと同じらしい。
1日に何杯もカフェを飲む人などは、あえて、カフェ バッソを心がける。

逆に、カフェ ルンゴ(長い)とは、水を多めに通過させて、カップの高い位置まで注がれたカフェのこと。普通のカフェの場合、バールのカフェマシーンで25秒かかる抽出時間が、ルンゴの場合は、30~35秒かかる。水が多い分、味は薄まるが、長い時間、熱湯が通過することによりカフェインも多く抽出される。

その他、カフェ マッキアート(染付き)と呼ばれる、カフェにミルクがちょこんと乗ったスタイルも定番だ。バリスタは、イタリア人のこだわりに正確に応じるべく、ミルクは泡状の熱いタイプか、それとも冷たいままか、尋ねてくる。

そして正統なカフェ愛好家は、ガラス製のカップを指定し、カフェに薄っすら覆いかぶさる琥珀色のクリームから質の良さを確認すると、砂糖を入れずにアロマを吸い込み、そして一気に飲み干す。良いカフェは余韻にも表れるという。

心地のよいカフェタイムで、今日の元気を充電


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もう一つ、イタリア人のカフェへのこだわりとして、バールの使い方についても触れておく必要がある。

イタリア人は、烏の行水のように僅かな時間、バールに浸かる。

そこで、いつものバリスタに「ボン ジョールノ!」と声をかけられ、
オーダーを伝える前に、「マッキアートでいいかい?」といつもの注文を確認してもらい、時には、カウンターに並ぶ人と世間話を交わす。
そんな居心地の良いバールは、
“私はこの小さな地区に生きる一員なんだ”というアイデンティティを味合わせてくれる。
カフェインに舌と体が反応する以前に、マインドが刺激されるのだ。

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カフェは単なる嗜好品にとどまらず、体に良い事が判明


最近、アメリカのCirculationという雑誌に、ハーバード大栄養学部博士課程のミン・ディン氏のコメントが掲載された。
1日に3~5杯のコーヒーは心臓病、糖尿病(ステージⅡ)、パーキンソン病などを阻止し、早死の確立を引き下げる、とある。

ここ数年、予防医学の情報が氾濫し「あれもダメ、これもダメ・・・」と慣れ親しんできた食材が問題視される中、コーヒーの効能が化学的に立証されるのは有難い。

気分転換をうながし、深い香りも楽しませてくれて、個人と社会を繋げてくれる一杯のカフェ。

最後にもう一つ、慈悲深い味わいのする「カフェ ソスペーゾ」をご紹介しよう。
主にナポリ地区で知られるスタイルで、自分の飲み干したカフェとは別に、
貧しくてカフェを飲めない誰かの為にカフェ代を置いていく、というもの。
たかがカフェ。されどカフェ。
生活必需品ではないけれど、スローライフの精神が宿るイタリア人にとって、
カフェタイムは、一日の元気をチャージする憩いの時間。
裕福層から貧困層まで、階級でわけ隔てられることなく、小さな地区のバールを共有できるあり方に、あちらこちらで、人情の香りが漂ってます。

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プロフィール

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大多和聖美(おおたわきよみ)
トスカーナ州・シエナ在住。ソムリエ。ワインショップ、小麦粉アレルギー対応レストランでのコック体験を経て独立。「エノテカトスカーナ」を立ち上げ、日本にワインやオリーブオイルの販売を行う。

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