「地中海食」が大腸がんのリスク減少に関係している

二瓶秋子 | 正しい医療ニュースをわかりやすく解説 第1回
魚と果物を多く食べ、ソフトドリンクを減らすことがポイント

地中海食のうち「魚を増やす」「果物を増やす」「ソフトドリンクを減らす」の3つの要素が、大腸がんのリスクを減らすのに重要であると分かりました。イスラエルのテルアビブ・メディカルセンターを中心とした研究グループが2017年世界消化器がん学会で2017年6月30日に報告し、その内容を欧州腫瘍学会がホームページで紹介しました。

 

svariophoto/Shutterstock.com

 

この記事の要点

・地中海食が大腸の健康に良い影響を与えることは既に知られていた

・一方で具体的に地中海食のどの要素が効果的なのかは調べられていなかった

・今回の研究により3つの要素の組み合わせが大腸がんリスク減少に重要と分かった

・3つの要素とは「魚を増やす」「果物を増やす」「ソフトドリンクを減らす」

 

 

「地中海食」のどの要素が大腸がんのリスクを減らすのか

 

がんによる死亡の上位を占める「大腸がん」。大腸がんの発生には、「赤身肉・加工肉、アルコール、高カロリー食の過剰摂取」、および「食物繊維を含む植物性食品の摂取不足」が関連するということが、これまでの研究により既に分かっています。また、これらのリスク要因を含まない食事スタイル(植物性食品、低カロリー食品、赤身肉よりも魚を多く取るなど)である「地中海食」を続けた場合と、大腸がんのリスク減少には関連があると示した報告もなされています。

 

一方で、地中海食の個々の摂取内容やその組み合わせと大腸がんとの関連性については、必ずしも明らかにされてはいませんでした。「大腸がん」は、大腸ポリープから徐々に発生します。大腸ポリープは、「腺種」と「鋸歯状(きょしじょう)ポリープ」の2種類に大きく分けられます。今回研究グループは、地中海食の個々の摂取内容およびその組み合わせと、この2種類の大腸ポリープとの関連性について、調査研究を行いました。

 

Double Brain/Shutterstock.com

 

 

800人を対象に進行ポリープと地中海食の関連性を調査

 

対象者は、集団健診または診断を目的とした大腸内視鏡検査を受けた、40~70歳の808人。大腸がんの手術を過去に受けた人、大腸がんのリスクが高いと認められている人、重症者、研究のアンケートに回答できない人などは対象者から除外しました。対象者は全員、身体計測、診察、日常生活の問診を受け、食事摂取頻度調査票(FFQ)に回答しました。このFFQは、今回の研究のためにイスラエル人用に改変されたものです。

 

地中海食をきっちり摂取しているかについては、「平均(中央値)よりも多く野菜や豆類、果物、ナッツ、種子、全粒粉、魚、鳥肉を摂取し、飽和脂肪酸(SFA)よりも一価不飽和脂肪酸(MUFA)の割合が高い食事を摂取している」こと、そして「平均値(中央値)よりも赤身肉、アルコール、ソフトドリンクの摂取が少ない」ことと定義しました(地中海食の遵守)。

 

また、大腸ポリープについては、「進行腺腫(10mmより大きく高度の異形成あるいは絨毛(じゅうもう)状組織を認めるもの)」「非進行腺腫あるいは鋸歯状腺腫が4個以上ある」「10mm以上あるいは高度の異形成を有する鋸歯状腺腫」のいずれかに該当した場合に「進行ポリープ」と定義しました。

 

進行ポリープが認められたグループと、調査時までにポリープの既往を持たなかったグループに分け、進行ポリープと地中海食の遵守との関連性を比較しました。

 

 

進行ポリープリスクは要素1つで3割減、3つすべてで8割以上減

 

結果、摂取した地中海食の要素が多いほど、進行ポリープの発症率は低くなっていました。

 

ポリープの既往を持たなかったグループが地中海食の要素を平均で4.5個摂取していると申告したのに対して、進行したポリープが認められたグループは1.9個と少ないことが分かりました。また、地中海食の要素を全く摂取しない人と比べた場合、2~3個摂取した人では進行ポリープを発症する確率が半減するという関連性が認められました。

 

他の食事要素を含むその他の大腸がんリスク因子も考慮に入れて調整した結果、研究グループは、進行ポリープの発症率を低下させる最良の組み合わせは、「魚を多く摂取する」「果物を多く摂取する」「ソフトドリンクの摂取を少なくする」の3点だと絞り込みました。地中海食の要素をまったく摂取しない人と比べて、これら3つの摂取内容のうちどれか1つを実践した人では進行ポリープが見つかる確率が30%強減っており、さらに健康的に3つすべてを摂取した人では、その効果によりおよそ86%減っていました。

 

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今回の研究により、地中海食のうち、大腸がんのリスクとなる進行ポリープの発生を減らす可能性が示される要素を3つ絞り込むことができました。一方で、これらが大腸がんの発症率や死亡率の低下につながるかどうかはまだ明らかにされていません。食事のパターンと大腸がんとの関連をより明らかにするためには、「次の段階として、大腸がん高リスク群で地中海食がリスク低下につながるかどうかを明らかにすることでしょう」と研究グループは結論づけています。

 


 

参考文献

「地中海食が大腸の健康に有益な可能性」, 海外がん医療情報リファレンス

“World GI 2017 Press Release: Zoning in on Specifics of Mediterranean Diet for Colorectal Health.”, ESMO

“The Mediterranean Diet: A History of Health”, Iranian Journal of Public Health

Mediterranean Diet Pyramid, Oldways Preservation and Exchange Trust

 

編集者プロフィール

  • 二瓶秋子(にへい あきこ)
  • 株式会社FRONTEOヘルスケア 研究・解析課 リサーチャー。東京大学大学院医学系研究科にて博士(医学)取得。信州大学医学部、東京理科大学生命科学研究所、東京大学大学院新領域創成科学研究科など、アカデミアでゲノム医学や免疫アレルギー学関連の研究に従事。複数のヘルスケア関連情報サイトの記事編集・運営を経て現職。

連載情報

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  • 医療に関する情報は、内容が難しいと感じる方が多いと思います。この連載では、正しい医療関連情報を一般の皆様向けにかみくだいてご紹介していきます。

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