咽の渇きは体の欲求?夏バテと水中毒、イオン飲料の取り過ぎ

2016年07月06日

小児科医 Dr. しろくま子の“みんなも知っていたらいいのにと思うこと”(水曜更新) 第24回


お酒じゃなくても飲み過ぎってあるのです。「夏バテでだるい」と言って水分ばかり取って、症状を助長していないでしょうか。脱水は避けたいけれど、「過ぎたるは猶及ばざるが如し」です。

 

水中毒をご存知ですか


一歳くらいの男の子の話です。「少しお腹をこわしてて、ぐったりしてるんです。水分は取れているのに」とのことで診察に来ました。
対面してびっくり。意識はもうろう。点滴の針を刺しても、泣くどころか反応しなかったのです。

 


この子は心筋炎などの急激に悪くなる病気にかかっていたわけではありません。食欲がなくて、麦茶ばかり飲んでいたのです。その結果、血液が薄まったような状態になっていました。水分が多すぎ、糖分や塩分が足りなかったのです。このシンプルな血液成分の異常は生命を脅かします。

つまり、水分ばかりを大量に摂ると、体がバランスをとるのが間に合わなくなり、危ないということです!二日酔いで気分が優れないとき、ぜひ注意してください。

塩分控えめ
ところで、この子の家では味付けを薄めにしていたそうです。子どもの食事には塩を入れていなかったとのこと。将来、高血圧にならないようにとの気配り。その心がけは素晴らしいと思うのですが、少なすぎてもいけないのです。難しいですね。

 

じゃあ、イオン飲料ならいいの?

 


糖分や塩分を含むイオン飲料やスポーツドリンクを飲んでいれば安心かと言えば、そうでないのがまた厄介なところ。イオン飲料は赤ちゃん用もあるので、安全な飲み物だという印象を持たれているようです。脱水の治療や予防に使われる経口補水液に成分が似ているせいもあるのでしょう。

しかしイオン飲料、スポーツドリンクと呼ばれているものは、経口補水液と成分のバランスが違います。つまり、そればかり飲んでいたら何かが偏るのです。

乳幼児にイオン飲料を毎日1L以上飲ませ、低ナトリウムでけいれん、意識障害を起こした例もあります。

ですからイオン飲料の普段使いは要注意です。大人でも飲み過ぎてしまい、食欲が落ちることもあります。甘い飲み物でお腹を膨らませると、体が必要としている細かい栄養素を取り損ないます。バランスを計算するのは大変ですが、様々な食品を取れば体が帳尻を合わせてくれます。大きな偏りがない限り調整できるようです。したがって日常生活では「甘くない飲み物(お茶や水)と固形食」の組み合わせが、望ましいと考えられます。

 

尿崩症(にょうほうしょう)と間違えられた飲み癖

 


体が水の取り過ぎについていけると、水中毒ではなく多飲多尿になることがあります。余分に飲んだ水分を体が頑張って排泄するのです。

飲みたいから飲む。これを体が求めていると勘違いすると、つい多くなるようです。飲むことが癖になって、適量がぴんとこなくなるのです。「口寂しくて飲んでいるな」と感じたら控えましょう。でも、無意識に飲む量が増えてしまうこともあるようです。なぜなら小さい子でもこの状態に陥るからです。

経験した例は、多飲多尿の幼児。よく飲んで、トイレも近い。糖尿病を心配して近くの医院を受診したものの、尿検査は問題なし。尿が出過ぎてしまう病気、尿崩症を疑われて病院に紹介されてきました。尿崩症の原因はさまざまで、脳腫瘍で起きることもあります。この子は精密検査のため入院しました。

ところが、水分を制限したら、この子の尿は減りました。つまり飲み過ぎで尿が多かったのです。本当に尿崩症だったら、水を飲まなくても尿が出続けて脱水になります(だから独自の判断で派手な水制限をしないで、おかしいと思ったら受診してくださいね)。似たような多飲多尿は時おり見かけます。珍しくはないようですよ。

 

口寂しいの?本当に咽がかわいているの?

 


飲むことが癖になっているのか、体が求めているのか。もちろん心配があれば診察を受けるとよいと思いますが、記録をつけると参考になります。

癖の場合には、次のような傾向が見られます。
1.日中は尿が薄くて一回量も多い
2.夢中になっているとき(遊び・仕事など)、外出で困らない(ドライブ・買い物など)
3.夜は眠れて(トイレに起きない)、朝には濃い尿が出る。


当てはまるようなら飲み方に気をつけてみましょう。咽のかわきをガマンすることはありません。一回に飲む量を制限すると、少しずつ直せることが多いようです。ペットボトルをすぐ飲みほせる場合は注意してみましょう。コップなどに注ぐと飲む量が減るのではないでしょうか。子どもでも同じです。もらえると飲めるので、もらったぶんだけ飲んでしまう子もいます。

水分摂取の必要量は状況によって変わるので、意識しても難しいとは思います。数字にこだわって安心できるものでもありません。「飲食はいろいろ少しずつ」という心がけで、体にバランスをとってもらうのが自然であるように思います。


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