「恋は3年で終わる説」は本当か? -恋愛を科学する-

2016年06月07日

はぐれ薬学院生(♀)の “しみる” ひととき 第24回


巷で耳にする「恋は3年で終わる説」。付き合いたての頃に感じたトキメキ、確かに月日と共に薄れていくというカップルは多いのでは。これにはあるホルモンが関係していると言われていますが、本当なのでしょうか・・・?恋愛の科学、どこまで解き明かされているのか、調べてみました。

 

恋の賞味期限は3年?


いつからか、カップルの危機は3年目に訪れるという話を聞くようになりました。俗にいう「3年の壁」というものです。

ある女性誌が2011年に行ったアンケートでは、平均的な交際期間は「1~3年」と答えた人が全体の4割で、それより短いのも含めると全体の約6割のカップルが3年以内に破局を迎えているそう。
別の記事によれば、付き合いたての熱が冷め、倦怠期に入るのがちょうど3年目というケースが多いのだとか。

そして最近、この3年の壁に科学的根拠があった!という記事を目にします。

それは、恋をすると分泌されるという「フェニルエチルアミン(PEA)」が、およそ3年で出なくなってしまうからというもの。

えっそんなことまでわかっているの!

と、最初は衝撃だったのですが、よくよく調べてみるとこの話、情報源がわからず、誰の話を基にしているのか全く不明なのです。

一体、恋をすると私たちの脳では何が起きているのでしょうか?

 

 

恋愛ホルモン、フェニルエチルアミン(PEA)って何?


PEAは、ドーパミンやノルアドレナリンといった神経伝達物質の放出を助け、快楽や幸福感を生み出す物質と言われており、「脳内麻薬」「恋の媚薬」なんて別名がついています。

PEAが分泌されなくなると、相手に会っても快楽や幸せを感じることが少なくなり、気持ちが冷めてしまう・・・ということのようです。

チーズやソーセージ、チョコレートなどにPEAが含まれていると言われ、これらを食べることで恋愛力アップ、なんてことも言われています。

論文を色々調べると、PEAという物質は確かに存在しており、働きもその通りのよう。
でも、3年でPEAが分泌されなくなると書かれたものは、見つけることはできませんでした。(※)

また、PEAは外からとってもすぐに体で代謝されてしまうため、食べ物からいくら摂取しても脳に届くということはほとんどなさそうです。確かに、そこまで効いていたらチーズ中毒になってしまいますね。

(※ ドーパミンが体の過剰な負担を避けるため、3年で出なくなるから、という説もあるのですが、こちらについても今回は確認が取れませんでした。)

 

 


PEAが3年の壁の原因というのは、ちょっと眉唾物のお話のようです。
でも3年の壁って本当にあるのか、これが気になるところ。
PEA、ドーパミン、ノルアドレナリン以外に恋愛と関係している物質はあるのでしょうか?
そして、壁があるとしたらどうやって乗り越えればよいのでしょうか・・・!

 

TEDにも出演した研究者が語る、恋愛の「3つの段階」


恋愛の科学について、こんな面白いサイトを見つけました。神経科学者と人類学者、2人の女性科学者が立ち上げたサイト「The Anatomy of Love」(訳:恋愛の解剖学)。

彼女たちは、恋愛の様々な段階にいる人々の脳内を、fMRI(磁気共鳴機能画像法)という装置を使って観察しています。fMRIを使うと、その人の脳のどの部位が活発に動いているのかを知ることができます。サイトでは、この技術を用いて恋愛中の脳はどうなっているのかを調べた研究成果が公開されています。

このサイトを運営する研究者の一人、Helen Fisherという方は、様々な分野の第一線で活躍する人がプレゼンテーションを行う「TED」にも出演しています。そんなHelen女史は、これまでの研究から、恋愛には3つの段階があり、それぞれがホルモンや脳内物質と関連があると提唱しています。


【恋愛の3つの段階】

段階1:あの人が“気になる”

 


パートナーを探している。いい人いないかな、という意識が頭から離れなくなる。

◆主に関係する物質:テストステロン、エストロゲン(性的衝動と関連)

段階2:あの人に”引き付けられる”

 


この段階がいわゆる「恋のぼせ」「恋は盲目」の時期。

他のことが目に入らなくなり、行動が大胆になる。食欲が減り、あまり眠らなくても平気になり、新しい恋人との空想に浸りたくなる。

◆主に関係する物質:ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニン 

 

セロトニンは、恋愛で最も大事な物質の一つ。ドーパミンやノルアドレナリンによって活動的になった脳にブレーキをかける効果がありますが、恋愛中の脳はセロトニンの量が減っており、ドーパミン・ノルアドレナリンの暴走を止められないようです(=周りが見えない、恋人が何をしているのか不安になる)。

別のグループの1999年の調査では、付き合って6か月以内のカップルの脳を調べたところ、恋愛中でない人の脳と比べてセロトニントランスポーターの数が減っていること、またその減少の度合いが強迫性神経障害の患者と同程度であることが報告されている。恋人からメールが来ていないか気になって何度も携帯をチェックしてしまうのは、セロトニンの減少が関係しているのかも。

 


段階3:あの人に“寄り添う”

関係性が長く続いていき、カップルの2人をつなげる絆が固まる。
この段階では、社会性に関係するホルモンが分泌されている。

◆主に関係する物質:オキシトシン(出産時に大量に分泌される)、バソプレシン

PEAが関係しているのは、段階2のようですね。Helen女史曰く、「お互い接している限り、段階2にずっと留まることはきっと無理でしょう」とのこと。

 

 

今回調べた限りでは、3年で恋が終わるという根拠を見つけることはできませんでした。

段階2までを恋とするなら、何年かはわかりませんが賞味期限はあるのかもしれませんね。
倦怠期で別れてしまうカップルは、段階2から段階3にうまく移れなかったり、段階3を長続きさせられないということなのかもしれません。

3年の壁を超えるには、段階2から段階3にうまく移り、いかに長く続けるかが重要になりそうですね。

 

ホルモンから見た長続きするカップルの秘訣とは


段階3はカップルの絆が深まる時期。この時期に放出されるホルモンを枯渇させないことが倦怠期の対策になるかも?!

では、どうすればよいのでしょう。

最近の研究で、オキシトシンはオーガズムを感じたとき、特に女性で大量に分泌されることがわかりました。

つまり、倦怠期に入る前から意識的にスキンシップを深めることが、段階3の維持には重要なのかもしれません。

なんだか月並みな結論に聞こえてしまいますが、長年連れ添うとスキンシップが減ってしまっているカップルも多いのではないでしょうか。
なんとかしたいと思っても、きっと、ためらいや気恥ずかしさで一歩を踏み出せない人もいるはず。

そんなときは、今回ご紹介した研究結果を思い出してみてください。

「恋の熱が冷めるのは自然なことで、これからは絆を深める時期なんだな」

とか、

「絆を深めるのにもスキンシップは大事なんだ」

なんて思えたら、少し楽になりませんか?

fMRIをはじめとする画像診断技術を使った脳の研究は、近年どんどん増えています。恋愛に関する科学も、もっと新しい情報がわかってくるでしょう。

最新の技術から、カップルのちょっとした幸せに繋がるような研究成果が出てきたら良いなぁと願っています。


コメント

    はぐれ

    2016年06月08日 07時55分

    はぐれ

    > 岡山様
    コラム執筆者です。この度はコメント、ご指摘いただきありがとうございます。
    私の調査が甘く大変失礼致しました。
    確かにDr.Fisherが「恋は4年で終わる説」を唱えていること、またその理由として恋愛の第2段階でPEAが分泌されるのではという仮説を唱えていることを確認致しました。
    ただ、ときめくような恋愛中のヒトの脳内でPEAの分泌が本当に起こっているのかどうかについ...


    岡山京介

    2016年06月08日 04時35分

    岡山京介

    ヘレンフィッシャーの著書にPEAの3年の話が書いてあったと思いますよー。
    腑に落ちる記述かどうかはわかりませんが^^

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