【腸内細菌*腸は第二の脳 vol.2】乳酸菌でストレス軽減? ―善玉菌を増やして、脳をケアしよう

2016年02月22日

はぐれ薬学院生(♀)の “しみる” ひととき 第11回

 

 

前回は脳と腸の関係について、歴史を追いながらご紹介しました。腸内環境を整えてメンタルケアをするという考えが、かなり昔に考えられていたとは驚きですよね。最近では、この考えを実証しようと日本でも人を対象にした臨床研究が行われています。また、善玉菌をとるプロバイオティクスだけでなく、菌のエサとなる食材を積極的にとるプレバイオティクスも注目されています。プロバイオティクスとプレバイオティクスの違いとは何でしょうか。

 

 

ストレスケアは腸から! 世界トップレベルと言われる日本の乳酸菌研究、最近の取り組み

 

 

徳島大学の六反一仁教授の研究グループが行った2015年の実験では、身体的・精神的ストレスが大きいと考えられる人体解剖実習中の医学生24人を2グループに分けて、それぞれ異なる発酵乳を4週間飲んでもらい、各種ストレスや腸内フローラの調査を行いました。

その結果、ある特定の乳酸菌が入った発酵乳を飲んだグループでは、もう一方のグループに比べ、唾液中のコルチゾールというストレスホルモンの増加が抑制され、不安や不眠、食欲不振などのストレスによって引きおこる症状が軽減していました。また、採取した便から腸内フローラを調べたところ、このグループでは善玉菌のラクトバチルスが増加傾向にありました。さらに、末梢血から採取した細胞の遺伝子を調べたところ、ラクトバチルスが増えた人では、ストレスがかかると起こりやすいと言われる炎症関連遺伝子の発現が抑制されていました。

つまり、ある乳酸菌を摂取すると、腸内フローラが善玉菌に有利な環境になり、おなかの調子が整うだけでなく、ストレスによって起こる不快な症状が軽減され、全身の炎症も抑制されることが期待できるとわかったのです。

ただし、この研究は人数がとても少なく、対象者も健康な医学部の学生とかなり限られた条件での試験結果ですので、「ストレスに効く!」というには、まだまだこれからたくさんのデータを取る必要があります。

 

ちなみに、六反先生曰く、乳酸菌の研究が活発なのは日本が1番だそうです(次がオランダだとか)。
日本をはじめとする東南アジア地域では、漬物のように野菜や豆などの植物・穀物を発酵させて保存する料理が数多く存在しますが、最近では、この漬物に含まれている乳酸菌がより健康効果に優れているのではないかと考えられています。

日本の伝統食は脳のケアにも良いのかもしれませんね。

 

 

プレバイオティクスは善玉菌のエサ! 両方摂ると効果アップ◎

 

 

腸内フローラを善玉菌優勢の環境にするには、善玉菌を摂るだけでなく、善玉菌がちゃんと増えてくれるように「エサ」を用意する必要があります。専門的には、人の消化酵素に分解されず、大腸まで届いて善玉菌のエネルギー源となり、悪玉菌にはあまり利用されない、つまりそれを摂ると善玉菌がよく増えて活性化するものを「プレバイオティクス」と言います。近年は、このプレバイオティクスに関する研究が盛んに行われています。

よくおなかを整える食品としてオリゴ糖が知られていると思いますが、オリゴ糖は代表的な「プレバイオティクス」です。また、便秘に良いと長く言われている食物繊維(特に、こんにゃくに含まれるマンナンや海藻に含まれるアルギン酸・アガロペクチンといった水溶性食物繊維)も、プレバイオティクスの仲間です。

プレバイオティクスが善玉菌によって発酵を受けると、酪酸(らくさん)やプロピオン酸といった短鎖脂肪酸ができます。この短鎖脂肪酸は、腸細胞のエネルギー源となったり、腸のぜん動運動や血流を調整したりする作用があります。中でも酪酸は、NF-κBという転写因子の活性化を阻害することで、炎症を抑える効果があることも示唆されています。

プレバイオティクスは、善玉菌を増やすだけでなく、腸そのものの働きにも関係しているのですね。

毎日の食事に取り入れやすい「プレバイオティクス」をまとめてみました。ヨーグルトやお漬物などと一緒に摂ると手軽で良いのではないでしょうか。

 

 

 

 

プロバイオティクス+プレバイオティクス+グルタミンで、腸からメンタルケアをしてみよう

 

 

 

 

上でご紹介したプレバイオティクスとは別に、青魚の刺身に含まれるグルタミン(注:グルタミン酸とは似ていますが別のアミノ酸です)が腸内環境の維持に重要という事も言われています。グルタミンは、小腸のエネルギー源として重要なだけでなく、免疫細胞の発育や増殖、粘膜の治癒促進にも働くマルチな物質です。グルタミンが不足すると、免疫細胞がうまく機能しなくなってしまいます。プロバイオティクス、プレバイオティクスと併せてグルタミンも摂るようにすると、強い腸内環境を作るのに役立ちます。

「プロバイオティクスは新しい向精神薬」と言われるくらい、メンタルケアの新しい手段として、腸内フローラの調整が期待されています。まだまだ解明されていないことは多いですが、善玉菌の健康効果はおなかの調子を整えるだけでないことは確かでしょう。毎日少しずつ食事に取り入れることで、健康な体を手に入れましょう!

日々の献立に迷ったら、腸内フローラを意識したお惣菜選びをしてみてはいかがでしょうか?

 

 

<出典・参考文献>
1. Kato-Kataoka A et al. 『Fermented milk containing Lactobacillus casei strain Shirota prevents the onset of physical symptoms in medical students under academic examination stress.』 Benefical microbes 1-12 (December 2015)
2. 『腸は第二の脳 整腸とメンタルヘルス』松生恒夫(河出ブックス)
3. 『プロバイオティクスとプレバイオティクス : 21世紀の食と健康を考える』ネスレ科学振興会 監修/和田昭允, 池原森男, 矢野俊正 編 (学会センター関西)

コメント

    Fujita0421

    2016年07月16日 20時36分

    Fujita0421

    オリゴ糖、乳酸菌。善玉菌はまめに摂らないとすぐ減ってしまう。

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