【腸内細菌*腸は第二の脳 vol.1】認知症でビフィズス菌が激減!

2016年02月15日

はぐれ薬学院生(♀)の “しみる” ひととき 第10回

 

 

今、話題の腸内フローラ。善玉菌を増やし、腸内環境を整えることで健康な体を手にしようという方が増えています。実は、腸内環境は脳とも密接な関係があるのです。あのダーウィンも脳と腸の関係に注目していたそうです。これまでにどんなことがわかっているのか、どうやって生活に取り入れればよいかを2回に分けてお送りします。

 

 

「腸は第二の脳」近代科学で証明された、脳と腸の不思議な共通点

 

 

ストレスを感じると、おなかが痛んだり、調子がおかしくなったりします。うつ病の患者さんには便秘などの消化器の不調を訴える方が多いです。最近では過敏性腸症候群(IBS)や機能性胃腸症(FD)とよばれる、精神ストレスが原因で胃腸の調子が悪くなる疾患の患者さんが増えており、社会的な問題となっています。また、日本には「腹の底から笑う」という言葉があります。

このように、脳と腸に何らかの関係があることは、昔から経験的に知られていました。進化論で有名なあのチャールズ・ダーウィンでさえも、著書の中でこの関係性について記述しています。

脳と腸の関係は、科学や医学の進歩により、1970年代頃から具体的に解き明かされる様になりました。そして最近、この2つをつなぐのに、腸内細菌嚢(腸内フローラ)が関係していることもわかってきました。

1980年代、アメリカの解剖学者であるマイケル・D・ガーション博士は「腸は第二の脳である」という学説を発表し、このことは大変な話題となりました。それまで腸は食物の消化吸収や排泄だけの器官と思われていたのが、脳と同じように神経細胞を通して他の臓器に指令を与える役割も持っていることが明らかになったのです。

脳と腸にはさまざまな共通点があります。発生学的に脳と腸は近い臓器で、まず腸ができたあと、そこから脳ができていく…という流れがあります。また、うつ病患者さんの脳内で減少することが知られている伝達物質「セロトニン」は、腸の動きにとても重要な役割を担っていることが知られています。

 

 

ストレスで腸のバリアが弱まり、免疫機能がダウン!悪玉菌も増える

 

 

脳と腸が自律神経を介して痛みや排便などの連絡を取り合っていることはよく知られていますが、最近ではこれ以外にもっと複雑なネットワークで色々なやり取りをしていることがわかってきました。その一つが腸内細菌です。

腸内細菌が人の心に影響するらしいということは、実はかなり前から考えられていたことでした。1900年代初頭には腸内細菌が出す毒素が精神や全身の健康に影響を及ぼすこと、その治療法として乳酸菌のような特定の細菌を口から取り入れることが提唱されています。また、1930年代には、心(感情)の状態が腸内フローラに影響し、ひいては全身の状態にも影響するという仮説も出されました。しかし、この考えは長らく見過ごされ、80年もの歳月が経った現代、科学の進歩によってようやく息を吹き返したのです。

人が精神的ストレスを受けると、腸のバリアが弱まり、腸の透過性が高くなる(腸から外に出て行かない様に防いでいたものが、もれ出てしまう。または、外から体内に入らない様に防いでいたものが、侵入してしまう)ことがわかっています。腸は人体最大の免疫器官で、全身の約6割の免疫細胞が腸内にいると言われています。ここがダメージを受けることで、全身の免疫機能が低下することが考えられます。

また、ストレスは腸内フローラにも影響し、悪玉菌のウェルシュ菌が増えることもわかりました。ウェルシュ菌は便やガスの悪臭の原因物質を作り出す細菌です。なんとなくストレスを溜めるとうんちやおならの臭いが気になる…という方は、腸でウェルシュ菌が増えているのかもしれません。
このようなことが起きると、悪玉菌などが出すLPS(リポ多糖)と呼ばれる毒素がバリアを抜けて全身に回り、炎症症状が引き起こされます。

一方、善玉菌の1つである乳酸菌には腸のバリアを強め、透過性が高くなるのを防ぐ作用があることもわかっています。乳酸菌は、ストレスによって悪玉菌に有利な環境になった腸内を改善するだけでなく、悪玉菌が出したLPSが全身に回るのを防ぐことで、体が炎症を起こすのを抑えてくれるのです。

 

 

加齢や認知症で善玉菌が激減! 「プレバイオティクス」で健康寿命を延ばそう

 

 

腸内フローラは、ストレスだけでなく加齢や認知症とも関連があることがわかっています。

(昔の研究ですが)1945年にデンマークの研究グループが健康な若い人とお年寄り63人の便にいるビフィズス菌の数を比べたところ、若い人では全員で便1gあたり1億個以上のビフィズス菌が検出されたのに対し、お年寄りではこの数を満たしていたのは44%の人だけでした。また、認知症のお年寄りで見ると、便1gあたり1億個以上のビフィズス菌が検出されたのはわずか9%の人だけで、さらに悪玉菌のクロストリジウム菌が大量に検出されたそうです。

腸内細菌の変化が認知症に影響しているのか、認知症になると腸内細菌が変化するのかはわかりませんが、腸内環境を良くしておくことに越したことはなさそうです。

当時はこの研究は注目されていませんでしたが、最近は同様の研究が行われています。細菌の培養技術が発達したことにより、より幅広い種類の細菌がそれぞれの患者さんでどれくらいいるのかを調べることができるようになりました。これからは、特定の菌が増えた・減ったではなく、腸内フローラ全体のバランスがどうなっているかがわかってくるようになると思います。

それでは、腸内環境をビフィズス菌や乳酸菌のような善玉菌にとって有利な環境にするには、どうすればよいのでしょうか?

次回は、善玉菌を増やすカギである「プレバイオティクス」に焦点を当てて解説します。

 

 

<出典・参考文献>
1. John F. Cryan & Timothy G. Dinan 『Mind-altering microorganisms: the impact of the gut microbiota on brain and behaviour』Nature Reviews Neuroscience 13,701-712 (October 2012)
2. 『腸は第二の脳 整腸とメンタルヘルス』松生恒夫(河出ブックス)
3. 『内臓感覚 脳と腸の不思議な関係』福士審(NHKブックス)

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