“健康”な長生きに長寿遺伝子は無関係?!健康寿命が長い人の特徴とは

2016年09月06日

はぐれ薬学院生(♀)の “しみる” ひととき 第33回

 

近年、話題となっている「長寿遺伝子」。この遺伝子の働きを高めることで、長生きにつながるのでは?と期待されています。ところが、最近の研究では、“健康に”長生きすることと、長寿遺伝子は関係ないとの報告が…一体、どういうことでしょう?

 

話題の長寿遺伝子とは?

 

近年、アンチエイジングで話題の長寿遺伝子。1999年、レオナルド・ガレンテ博士がサーチュインという遺伝子に老化や寿命を制御する機能があると発表したことをきっかけに、これまで数々の研究が行われてきました。

 

サーチュインは、だれでも持っている遺伝子ですが、普段はそのスイッチが「OFF」になっており、カロリー制限やレスベラトロールという成分を摂ることでスイッチが「ON」になる(活性化する)と、寿命が延びるのでは?と期待されています。サーチュインの活性化は酵母や線虫、ショウジョウバエで寿命延長効果が認められていますが、ヒトではまだ確かなことはわかっていません。

 

サーチュイン以外にも、ご長寿の方に特徴的な遺伝子パターンを解析する研究が盛んに行われており、現在までに幾つかの長寿遺伝子が報告されています。

 

これからの長生きのキーワード、”Wellderly”って?


老化や長寿に関するこれまでの遺伝子研究は、主に100歳以上の方(百寿者)に着目して行われてきました。しかし、ご長寿の方々が“健康に”長生きしているかというと、必ずしもそうではありません。ドイツで行われた研究では、100歳以上の高齢者は平均5種類の病気を患っており、半数以上の方は命に関わる疾患を抱えていることが報告されています(医療の進歩によって、健康でなくても生きながらえている方が増えたということでしょう)。健康寿命を伸ばそうという言葉をよく聞きますが、これは“健康に”長生きすることがどれだけ難しいかを示しているといえます。


そこで最近、“健康に”長生きしている方を表す“Wellderly”well:健やかである+elderly:お年寄り を組み合わせた単語)という言葉が提唱されています。これを目指すための秘訣を知ろうということで、単に長生きしているのではなく健康に長生きしている”Wellderly”な方に対象を絞って、その遺伝的な特徴を調べようという試みがアメリカで行われました。この結果は、今年、三大科学誌の一つ「Cell」に発表されています

 

 

 


▶どんな人について調べた?


80歳以上で、がん・認知症・心筋梗塞・脳卒中・腎不全・自己免疫疾患・になったことがない“Wellderly”な人 1,354人(実際の解析に使われたのは511人)

 

▶何について調べた?


全ゲノム情報を解析し、一般人集団のゲノム情報と比較

 

“健康に”長生き、Wellderlyの秘訣は?

 

まず、この研究で集めたWellderlyな人々を一般的な70歳以上の人々と比較したところ、次のような特徴があったそうです。

 

▶研究対象となった”Wellderly”な人々の特徴


・男性の割合が少し高い
・男性では喫煙者の割合が少し高い
・スポーツに励んでいる
・平均より少し痩せ傾向
・学歴が高い

 

健康なご長寿はスポーツに励んでいるというのはなんとなく腑に落ちますが、喫煙者の割合が多いのは、ちょっと意外ですね。(もちろん、タバコを吸ったほうが長生きに良いというわけではありませんので、お間違えなく…)。

 

では遺伝子には何か特徴があったのでしょうか?
今回の研究では、比較対象として民族の割合が同じくらいになるように調整した一般人の集団686人のゲノム情報を使っています。

 

▶この研究でわかった、”Wellderly”な人々の遺伝的な特徴


従来アンチエイジングに関係すると考えられてきた長寿遺伝子に関しては、一般人と差がみられなかった


・認知症、心疾患のリスクに関係する遺伝子のタイプを持つ人の割合が、Wellderlyでは少なかった(=Wellderlyではこれらの疾患にかかりにくい遺伝子パターンをもつ人の割合が多い)


・がん・2型糖尿病のリスクに関しては、Wellderlyと一般人であまり差がなかった


・認知機能やカルニチン(脂質の代謝に関係する物質)の量と関係する遺伝子領域ではWellderlyで特有のパターンが見られた

 

 

なんと、健康に長生きしている人とそうでない人では、長寿遺伝子の違いはほとんどないことがわかったのです。健康や若々しさの定義は人それぞれではありますが、「重い病気にかからない」という意味に限っていえば、長寿遺伝子はあまり関係していないようです。

 

この研究では、重い病気にかかったことのないお年寄りを集めたので、病気になりにくい遺伝子パターンを持っているのはある意味当然なのかもしれません。それでもがんや2型糖尿病の遺伝子に関して違いが見られなかったのは、遺伝子ではなく生活習慣や他の要因の影響が大きいと考えられます。


 

やっぱり生活習慣がカギ…。アンチエイジングの遺伝子研究はこれからに期待

 

“健康に”長生きしている人=Wellderlyの秘訣を追った研究でしたが、今回の調査では特別な遺伝子は発見できませんでした。

今回のような遺伝子研究はまだまだ始まったばかりですので、解析方法が洗練されていくと、新しいことがわかるかもしれません。Wellderlyの調査は今後も続けられるそうなので、これからの情報に期待大ですね。


とはいえ、遺伝子が寿命に影響するのは25%と言われています。やはり、75%の環境要因、なかでも自分でコントロールできる生活習慣を変えることが、一番の秘訣なのかもしれませんね。

 

出典・参考文献

Erikson GA, et al. Cell 2016; 165(4): 1002-11

Poulose N, Raju R, Biochim Biophys Acta; 1852(11): 2442-55

Jopp DS et al. Dtsch Arztebl Int 2016; 113(12): 203-10

 

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