長寿遺伝子をオン!で「老けない人」に

2015年11月04日

ついに人類がたどり着いた夢の「長寿遺伝子」

 

 動物の中には、「若返り」現象が確認されている不老不死のベニクラゲや、自らちぎれて増え続けるプラナリアなど、寿命とは無縁とも思える不思議な生き物たちがいます。

 しかし人間を含め、ほとんどの動物は、遅かれ早かれ「死」を迎えます。だからこそ老化や寿命は私たちにとって大きなテーマです。浦島太郎の玉手箱や、かぐやひめの不老不死の薬に、昔も今も変わらぬ人間の「生」への執着を感じます。

 いつか終わる身だからこそ、「できるだけ元気に、できるだけ長く」と願い、その結果、医療が発達した先進国では、平均寿命が非常に延びました。特に、日本人女性の平均寿命86.6歳(2013年)は、他の長寿国を大きく引き離して、ダントツの世界一です。

 国によって差が出ることからも明らかなように、寿命は、住環境、食生活や習慣、経済状況、医療体制、そして遺伝的要素に左右されます。そして、同じような条件で暮らしていても、面白いことに、老ける人と老けない人がいます。

 その秘密を解明しようと、たくさんの科学者が、アンチエイジング研究に打ち込んでいます。分子生物学の分野では、1988年にトーマス・ジョンソン博士が、1993年にシンシア・ケニヨン博士が、それぞれ線虫から「老化促進遺伝子」を発見しました。いずれも「この遺伝子が働かなければ長生きできる」という、老化の犯人を名指しする研究でした。

 

 一方、2000年に米マサチューセッツ工科大学(MIT)のレオナルド・ガレンテ博士が約10年かけて見つけた「長寿遺伝子」は、「この遺伝子が働けば長生きできる」という、全く逆のもの。いわば、老化を食い止めてくれる救世主的な存在です。

 酵母菌から見つかったこのSir2(サーツー)遺伝子と同様の遺伝子は、後に哺乳類でも見つかり、「サーチュイン遺伝子」の名で知られるようになりました。人間のほとんどの病気は老化が引き起こすため、それを遅らせる遺伝子の発見は、まさに画期的でした。

長寿遺伝子を目覚めさせるのは「プチ断食」?!

 

 ヒトは、最長120歳ぐらいまで生きると言われています。それでも実際そこまで生きられる人が稀なのは、加齢とともに進行する全身の衰えが止められないからです。

 ガレンテ博士は、サーチュイン遺伝子のことを「生物の長い進化の過程で、老化そのものを調節し、つかさどるために選ばれた特別な遺伝子」と語っています。

 その言葉通り、サーチュイン遺伝子は、人間の体の中で、細胞死(アポトーシス)を抑制し、細胞を修復するタンパク質を活性化、細胞のエネルギー工場であるミトコンドリアを制御するという、まさにオーケストラの指揮者並みの大役を果たしています。

 ただ、この誰の体にもあるサーチュイン遺伝子は、いつでも働いているわけではありません。むしろスイッチオフになっている場合が多いと言います。この長寿遺伝子をオンにする方法を知りたいと思いませんか?

 その答えとして、よく知られているのが、「断食(だんじき)のススメ」です。この遺伝子は、もともと飢餓状態の体を救うために進化してきたので、空腹によってスイッチが入るというのです。

 確かに、さまざまな動物を使った研究で、カロリー制限をすると細胞内にあるミトコンドリアが補酵素NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)を放出し、それが核の中に入り長寿遺伝子を活性化させることが明らかになっています。

 そのため、この遺伝子を眠らせている人が多い飽食の現代日本では、敢えて毎日朝食を抜く、あるいは1日1食しか食べないといった方法で、長寿遺伝子を目覚めさせる健康法を実践している人たちがいるわけです。

 大食い競争がテレビで繰り返し放映され、巷に食べ放題の飲食店が乱立している日本で、暴飲暴食を戒めることには意義があるでしょう。日ごろ食べ過ぎて胃もたれしている人が絶食を試すことで、なんらかの健康効果が現れるのも当然かもしれません。

 でも、骨粗しょう症やうつ症状の誘発など、カロリー制限の危険性を指摘している医師もいます。持病がある人はもちろん、プチ断食を始める時には、よくよく自分の体の状態を把握してから実行に移したほうがよさそうです。

 カロリー制限をしなくても長寿遺伝子の恩恵に浴する手段として、サーチュイン活性化物質を含むサプリメントなども開発されています。その代表的な成分は、赤ワインなどに含まれるレスベラトロール(ポリフェノールの一種)です。

 長寿遺伝子発見から15年経ちましたが、その活用法には、まだ諸説あるのが現状です。ちなみに、発見者のガレンテ博士は2007年出版の著書で、「わたしはカロリー制限はせず、適度な運動を心がけている」と語っています。

 さらなる研究成果を待ちながら、自分なりの長寿への道を見つけましょう。
 

ライター/瀬戸内千代(せとうち・ちよ)



■参考文献:『NHK未来への提言 レオナルド・ガレンテ「長寿遺伝子」を解き明かす』レオナルド・ガレンテ、白澤卓二(NHK出版)

 

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